⅖長崎新聞「郷土文芸」(2) グループ作品、他。

◎「グループ作品」「歌・句誌」より
(小佐々鵙の子句会)

★洗たくに耐へて愛しき冬帽子 馬場マチ子

★御降や極彩失せず大漁旗 髙平保子

★月影に最西端碑冴返る 鴛渕和明

(まつら俳句会)

★餅つきの気合かけごゑ杵の音 永淵勝幸

★なにげなき暮しの重み初暦 福田久美子

★御降り静かに満ちる心字池 大内弘美

(県俳人会)

★数へ日や喪服のままの厨事 吉岡乱水

★どのビルも夜業の灯クリスマス 荒井千佐代

★風は仕手紅葉舞ひまふ石舞台 木下慈子

★手話付きの「火焔太鼓」や十二月 永川庸子

★追焚のひとりゆるりと柚風呂に 中村ひで子

★数へ日や消しゴムに彫る辰の髭 西 史紀

(沖長崎支部帆の会)

★寒造り蔵人水の味きはめ 阿部順子

★夫と吾と老いて健やか雑煮椀 福山和枝

★大寒や少し寄り添ひ歩みをり 山下洋一郎

★風花や小学校の滑り台 伊藤壽彦

★墓仕舞ひ枯れし欅の残されて 瀬戸口智彦

(花鶏つむぎ句会)

★死ぬと言ふ大事みな持ち日向ぼこ 立石勢津子

★とりたてて仕事なき身の師走かな 西 のぶ子

★寒菊の黄の深まりし母屋跡 西岡芳枝

★着ぶくれて保守点検の始発駅 森 恒子

(風羅坊句会)

★十分の一ほどの秋来たりけり 川崎あてね

(杏長崎茜句会)

★爆心地灼けし地霊に雪の花 内田育子

★「会いたい」とひらがな踊る年賀状 藤本紗弥

★人日や女神大橋抜ける船 米光徳子

(杏長崎椎の実句会)

★手間暇が好きで砥石に冬の水 栗山ゆかり

★お出掛けの催促めくやマスクの子 江口よしえ

★冬茜空より雀こぼれ来る 田中蔦枝

★紅葉林抜けて雲なき富士の山 深野敦子

★名刺から解放されてちゃんちゃんこ 西 史紀

(咲俳句会)

★通訳の難儀してゐる達磨市 内田育子

★春の草怪獣達の寝転んで 植木千幸

(西彼教育文化センター俳句教室)

★落葉踏む音を楽しと杖同士 上野沙知

★夕暮れの千トンクレーン鷹渡る 梅川寛治

★蝶番の軋む古納屋茎の桶 楠本シヲリ

★抱かれて出を待つ園児聖夜劇 楠本良子

★老いたとて丸くはなれず花柊 笹山恒子

★段畑に干大根の暮れ残り 森 篤

★山里に残る文楽実千両 相川正敏

(原城俳句会)

★賀状見てそばに聞こゆる友の声 西園元子

★柚子風呂に心あそばせ長湯かな 松島澄子

★ふたり祝ぐ孫子は食はぬ雑煮かな 窪田篤巳

(波濤佐世保支部)

★七年を共に過ごして逝きし犬わがアルバムにあまた顔出す 志久達成 

★朝ドラのメロディーにふつと若返り病も忘れひととき過ごす 鬼澤光子 

★前だけを見て飛ぶ鷹の気高さに斯くありたしとふとも思ひぬ 松尾邦子 

★クマ被害聞かぬあのころ子どもらとよく口遊みし「森

のくまさん」 堤 のりこ

(湾11月号) 

★葛の花無人のダム湖管理棟 田原より子

(天頂11月号)

★月涼し麻のシーツに取替へ 小佐々あけみ

(馬酔木11月号) 

★月祀る生還したる特攻兵 辻本みえ子

★百日紅見ればあの日のキノコ雲 深町まさこ

★ポマードの父の香残る籠枕 藤本櫻子 

★街中に供養の鐘や原爆忌 山田聖林

(沖11月号) 

★百万頓ドック帰燕の旋回す 朝長美智子 

★蛤となれぬ雀は土を浴ぶ 米光徳子


◎「短歌(うた)ありて」


★ちちのみの父のアルミの弁当ばこ寒天作りに今も使いぬ 荒木弥生

 〜掲歌には、父親が長年使用していたアルミの弁当箱が詠まれている。大ぶりのもので、表面にはでこぼこも多数あったことだろう。初句には「ちちのみの」という枕詞が用いてあり、父への思いがあふれている。今もその弁当箱は健在で、寒天作りに使われているという。まさに家族の歴史がそこにあり、古きよき昭和の時代をほうふつとさせる。「あすなろ」202号より。(水甕・前田靖子)


★病む友を見舞いて帰る日暮れ道ほのかに香る白梅のあり 中村清美

 〜病んでいる友を見舞った帰り道は、複雑な思いを胸に抱いていただろう。そんな薄ぼんやりとした日暮れに白梅を見つけた。ほのかな香り、そこ には確かな春がやってきているのだ。友が快方に向かう兆しかもしれないと、祈りを込めて見つめる作者が目に浮かぶ。それは白梅のように清らかで優しい姿だ。この歌が掲載されている中村清美歌集「少女の言葉」は美容師として生きてきた誇り、家族やふるさとへの愛、暮らしを慈しむ姿勢そして何より豊かな感性に満ちている。「玄関の冬越す虫をそっと見る虫一匹の居る温かさ」。小さな春の気配に心が温かくなった。(幻桃・岩崎勢津子)


◎一面「きょうの一句」

 ※「きょうの一句」はあとでまたこの一週間分を投稿します。

◎俳句はいま「澤」(小澤實)「夜景の奥」(浅川芳直) 神野紗希

※こちらも、後日、読みやすいように活字にしてまた投稿します。