2/4朝日俳壇・歌壇。「放棄田に春の七草摘みにけり(小谷一夫)」他。
★新日記こころの天気加へけり(茨城県阿見町)鬼形のふゆき
★祈り励まし助け合い冬の能登(埼玉県長瀞町)坂上ふみを
★八代亜紀彼岸の春へ舟を漕ぐ(千葉市)丸茂和志
★着水の白鳥こともなげの顔(枚方市)阪本美知子
◎長谷川櫂選
★春の水蛇篭に転居源五郎(河内長野市)西森正治
【評】蛇篭まで水が増した。源五郎も喜々と。
★寒月や闇に一本滑走路(静岡市)松村史基
★冬麗やリュックに揺るる水の音(ドイツ)ハルツォーク洋子 ☆三才の手があたたかい冬の道(川崎市)かとうゆうき
※高山れおな共選。作者は10歳。
★水替へてとろりと沈づむ寒の餅(名張市)稲住青陽
★真民の詩集と出会ふ冬籠(高槻市)若林眞一郎
【評より】真心の詩人、坂村真民。
◎大串章選
★蕉翁の影を幻視の枯野かな(横浜市)渡辺萩風
★水の色氷の色になりにけり(相模原市)井上裕実
★青空に何も隠さぬ枯木立(我孫子市)森住昌弘
★寒鯉のいのち重たく浮いて来ず(東京都足立区)望月清彦
★春めくや始発電車の老二人(相模原市)はやし 央
★放棄田に春の七草摘みにけり(大村市)小谷一夫
◎高山れおな選
★地震きて元日能登のすさまじさ逃げて逃げてのアナウンスの声(大牟田市)平野 實
★おろおろと椿の幹につかまりておさまるを待つこの大地震に(新潟市)太田千鶴子
【評】新潟の太田さんは、椿に掴まって必死に耐えた。能登地方の地震と言うことで、本欄のかつての常連山下すてさんを想う歌も多くあった。
☆輪島のひと山下すての歌にある震災前のしずかな暮らし(三鷹市)大谷トミ子
※高野公彦共選。「山下すてさんは、かつて朝日歌壇で活躍し、あまたの秀歌を残した輪島在住の人」(高野公彦さん)
★舳倉島どうなんだ粟島・飛島は 津波のしかかる冬の小島は(東村山市)さいとうすみこ
★時を経るごとに死者数増えてゆくニュース悲しき正月三日(五所川原市)戸沢大二郎
★ノックして部屋に入ってくるまでのドアの向こうの吾子の逡巡(奈良市)山添聖子
★賞味期限切れし身なりと我が言えば古酒の色気と言いし人あり(秩父市)畠山時子
★俺と結婚してからどんどん綺麗になつていつたとみんな言つてる 秩父市)浅賀信太郎
◎馬場あき子選
★能登地震に募金しにゆく福島の復興途上の浪江町の吾は(福島県)守岡和之
★図書室でいつも絵本を読んでいた子が箱根路の一区走りいる(埼玉県)中里史子
☆おにぎりに静かにしみ込む珠洲の塩鈍色の海の味をかみしむ(枚方市)唐崎安子
※高野公彦共選。
★学童の冬のガラスにほんのりふたつ母を待つ子の手のひらの跡(山口県)庄田順子
★灯のつかぬ工場残る枯野なり倒産家族いかになりけむ(鹿嶋市)加津牟根夫
◎佐佐木幸綱選
★元日の能登には希な青空に地震に傾く納屋を見てをり(羽咋市)北野みや子
★長き列の後ろに並び電柱の傾く広場で水を待ってる(高岡市)梶 正明
☆新雪の積もった朝の公園に木と木を繋ぐリスの足跡(江別市)長橋 敦
※高野公彦共選。
★電子機器ふえて火のなきキッチンの元朝に祀るかまど三神(藤枝市)永野紀子
◎高野公彦選
★七草の汁(つゆ)盛る椀は輪島塗り想い出の朝市地震(なえ)焼き尽くす(松本市)須貝大二
★今日もまた夜空に響くヘリの音能登への支援物資の急ぐ(福井市)野原つむぎ
★震災を経験した身は北陸の寒に祈願す一陽来復(宮城県)武田 悟
★二秒間迷子になった ステイから戻った母に「誰?」と問われて(鎌倉市)半場保子