1/22長崎新聞「郷土文芸」(2)「グループ作品」他。

◎「グループ作品」「歌・句誌」より

(諫早すずな俳句会)

★寝かされてギョロリ目を剥く案山子かな 篠崎ひでこ 

★見目形誉めていただく吊し柿 篠崎清明

(紫陽花句会)

★メモ書きのよくもふえたり古暦 山下 忍

★おでん鍋あれこれ足してはみ出して 大島尚子

★手間をいとはぬ母のもてなしおでんかな 前田美恵子

★冬至南瓜床下にごろりと出番待つ 林 恵子

★電飾に眠れぬ木なり十二月 松島文江

★独り身の三日三晩のおでんかな 松尾 安

★食べて寝て勤労感謝の日を祝ふ 牧 明子

(土曜俳句会)

★小春日和玄関に母いるような 相川文子

(けやき句会)

★背中見て育つ勤労感謝の日 江良 修

★七五三十歩に一度草履脱げ 團 俊晴

(深堀橡俳句会)

★冬ぬくし友に賜はる受賞本 佐藤とき子

★武家塀を照らす電飾クリスマス 佐藤史彦

(あけぼの東部合同短歌会)

★それぞれが自由きままに踊りたる運動会の二歳児ダンス 末藤ちづ子

★新聞の数独解けず消して書くいらだつ妻へそっと茶を注す 市瀬博文

★あのような元気な友も病気する 何と悲しい生の現実 折原博子 

★コスモスの風にもたれて揺らめいて小さい秋が膨らみをます 千賀恵子

(湾10月号)

★炎天に水立てて飲む野球の子 田原より子

★ハ行みな笑まふ声なり小鳥くる 村川雅代

★ギヤマンの皿に盛りつけ夏料理 山本松子

★源内は煙管片手に土用入 籏先四十三 

(同人10月号) 

★地球めく西瓜や何処に刃を入れむ 奥村ちか 

★黴の香や燭の炎揺るる納戸神 後藤志津子

★蜘蛛の囲の一夜城かと煌めけり 小川くみ子

(河10月号) 

★もう誰もゐない晩夏の椅子にをり 井上純子

(海原10月号)

★七変化青春脳はペーパーレス 江良 修 

★父の日やいつの間にやら酒 飲みに 鳥井國臣

(波濤10月号) 

★大きな手は療法士向きと言はれたりイケメン理学療法士さんに 迎 みどり 

★傍らに友あらば何を語らんか華やぐ街を一人過ぎゆく 森田英基

(波濤10月号)

★ホトトギス綺麗に咲いた よし今日は薄紫の着物を着よう 山口美智子

★退院ができますよとふ医師のこゑ電話の向かうに母も聞きゐむ 吉井ゆかり

★森林をくぐり抜け去る青葉風地熱をさらってまためぐりゆく吉野朋子

(香蘭10月号)

★向かい家の周りの雑草気になれど余計なお世話と見ざる言わざる 本田民子

★細かなる文字のレシート取り出してわが一日の足取りたどる 有馬智賀子

★公園のつつじの植え込みその中にたった一輪芙蓉咲きおり 安藤経子 

★親指のつけ根が麻痺し痛みあり右手がだめなら左手があるよ 朝倉千里 

★花畑にマダーボールが実りたりつい撫でたたくシマシマ模様青木朝子


◎「短歌(うた)ありて」


★留守電の亡き母今日も柔らかに我を呼ぶなり「もしもし千春」 赤見坂千春

 〜一読して涙が出そうになった。なんて切なくて優しい響きのする一首なのだろう。留守電に残る亡き母の声は、「今日も」とうたわれているのだから、作者はきっと毎日のように聞いているに違いない。まるで生きているかのように「もしもし」と呼びかけてくるその声。映像で見るよりも目を閉じ聞く声は静かに心にしみてくるようだ。また三句目の 「柔らかに」ではその母親像がくきやかに立ち上がってくる。きっと物静かで優しいお母さまだったのだ。そして結句、作者の千春という春の日だまりのような名でピースが見事にうまった。他の名ではだめだった・・・かもしれず。(コスモス・岩丸幸子)


★わが夫の喜寿の祝いはしたのかなと百一歳の父のふと問う 中村恭子

 〜「百一歳の父」は作者の実父で、明治、大正、昭和、平成をたくましく生き抜き、酒好きの豪放な性格であった。歌はアンソロジー「梅咲けば」より掲出。書名は父の誕生日1月25日が梅花の季節で、父が好んだことにちなむ。その父が思いついたように義理の息子の喜寿祝いをしたのかと尋ねたのだ。作者夫婦にとって思いがけない父の気遣いがうれしく、心を打たれたことであろう。「百一歳の父」のふとした問いだからこそ、温かい真情が貴く深く感じられ、父と義理の息子の好ましい間柄が伝わってくる。作者は長崎新聞文芸賞を短歌と俳句の両部門で受賞。(心の花・西野國陽)


◎「あわい」欄

▼島原市の短歌グループ、土筆の会(三浦一正代表) が、2023年の歌会で披露した全作品を収載した歌集「令和五年・全歌集」を作成。


 同会は17年発足、会員16人。月1回の歌会で1人2首ずつ発表しており、年間の総まとめとして作成する歌集は7冊目 だ。

 自然や日常生活など幅広いテーマを多彩に詠みつつ、23年らしい時代性も見て取れる。


★待ち待ちし新幹線に乗車する8分の旅瞬きのごとし(金子明美)

★G7世界のトップ集いたり平和願いしか何も語らず(反田和子)

★マスク取れ紅さす女に声かける素顔はれやか我も真似せむ(吉田英子)

★雨音に「お出掛け禁止」と言われたよおうちで静かにカタツムリかな(青木宣道)

★墓参後の三年ぶりの中華街孫子とともに一時間待つ(肘井裕子) 


 など。22年の作品からピック・アップしてタイトルを付けた「一人四首選」も収録。手作りのA4判和とじ本。問い合わせは中村縁衣子さん(電080・3953・2411)。


(記者は犬塚泉さん)


◎一面「きょうの一句」

 ※「きょうの一句」は次ページにこの一週間分を投稿します。