1/19山梨新報「しんぽう文芸」山梨の句友、田辺義樹さん報。

◎歌壇 祢津達子選

★軽やかに一歩踏み出した朝の庭確かむ二步目三步目すっと 甲府 丸山洋子

★我以外は皆師なりとの師の言葉吾の凡句も佳句へ導き 甲斐 松田健嗣

★地を割りてにじみ湧き出るラジウムのぬる湯にじっと身をば沈めて 甲州 秋野正彰

★新装の五メートルの歩道橋見えなかった街山も間近に 甲府 小尾康弘

★雨露にぬれる石畳檜皮葺の大善寺に理慶尼(りけいに)記読む 甲府 天野 正

★年の瀬のサロンに歌う高齢者『谷村』偲び「いい日旅立ち」 中央 前田良一

★稲荷社の切られた銀杏の切り株に二つ輝く狐の置物 甲府 小澤武雄

★わが庭のこぼれるほどに実をつけた南天光るあらたまの朝  笛吹 石倉絹子

★赤蕾つけて年越す梅の木の枝張りみごと前途洋々 市川三郷 米村昭三

★義妹の死を喪中ハガキではじめて知る吹き抜けて行く木枯らしの音 甲府 内藤勝人

★目出度さも一瞬にして崩れたり珠洲輪島能登半島地震 埼玉 所 富子

★木々の上に陽の昇り来る山の道今日一日の幸せ祈る 甲府 津田幸子

★天井の龍の目見つめ手を叩き鳴き声を聴く辰年の朝 笛吹 伊藤 清


◎俳壇 山田省吾選

★蹲に松笠ひとつ寒の月 大月 小俣義人

★余震なほ続く被災地冬の雨 笛吹 石倉絹子

★初景色駿河湾より表富士 富士吉田 小林祥子

★元旦や富士見ゆる部屋開け放つ 富士吉田 青柳時子

★岩殿の巌を濡らす初時雨 大月 志村忠義

★颯々と風通り越す枯尾花 甲府 村松幸治

★子らの蹴るサッカーボール初空へ 甲州 水上優子

★初詣白き巫女の手絵馬を売る 中央 志田末男

★初御空富士くつきりと雄姿みせ 富士河口湖 堀内智美

★独り居の刻の流るるクリスマス 都留 松沢節子

★姪と孫鶴折る里の女正月 甲斐 松田健嗣

★妻墓誌に冬日やはらか七七忌 富士吉田 鈴木眞人

★仏壇へ飾る二輪の寒椿 甲府 中村 彰

★掛軸の松に日輪年迎ふ 市川三郷 立川亮子

★白鷺の親子が帰る枯木山 都留 前田智子

★里芋を洗ふ手の皺祖母に似し 市川三郷 片田佐恵子

★冬田道園児並びて散歩する 富士川 渡邊酔庵


◎柳壇 坂田よし江選

★汚れなき花を育てた土の自負 甲府 田口節子    

★”ありがとう”心に沁みるいい言葉 中央 志田末男       

★威勢いい声に押されて一歩出る 笛吹 金丸典男

★漱石も子規も柿好き古刹好き 甲斐 松田健嗣

★面会日何度も触る妻の肌 埼玉 伊藤一男

★墓参には何時も我が家の庭の花 甲府 米山八重子

★二歳児と遊ぶ米寿も子に返る 山梨 松下時子