高平保子句集『船団』(2) 21〜60

(昭和61〜64)
21 麦は穂に待つ事慣れて漁師妻

22 産声や白木蓮の空揺らし

23 乳呑児の浴衣まさぐる身八ツ口

24 かけ出してママと呼ぶ声さくら貝

25 夏芝をぴこぴこ鳴かす幼靴

26 母と子は同じ齢なり聖夜劇

27 縄飛びに交じる先生風光る

28 春泥を飛び損ねたるランドセル

29 手加減のなかりし子らの土竜打ち

30 鉄棒の空けり上げて卒業す


31 新涼の白きTシャツ変声期

32 卒業や無口な子にも喉仏

33 漁すてし子には子の道賀状来る

34 ひらがなに交じるカタカナ鳥の恋

35 子の一字もらふ船名青葉潮


(平成1〜9年)

36 寝かせおく明日のパン生地復活祭

37 操舵室マリアの横に餅飾り


(平成26年)

38 十戒の一つを犯し寒の紅

39 焼酎の発祥の島野水仙

40 歳晩や瀬戸の難所の舵さばき

41 八朔や一行記す漁場(ぎょば)日誌

42 十五夜へ抱き上げ乳歯こぼれさす

43 卒園やしつかりしかつて抱きしめて

44 鍵盤を叩いてふやす春の星

45 菜の花や吾子の初潮を告げらるる

46 大楠の光がさわぐ鳥の恋

47 乾坤のシーソーの声秋高し

48 夢といふ文字太ぶとと凧上がる 


(平成10〜19年)

49 渓谷の流れを聞きてキャンプ張る

50 月天心寝袋の皆寝しずまる


51 渓流の一蓮托生汗の綱

52 ためらひて山の混浴夕もみぢ

53 嫁に行く気などさらさら雛納む

54 飛花落花ことば空から降るやうに

55 娘らの胸ゆさゆさと神輿(みこし)来る

56 脱ぎすてて乳房の重し花疲れ

57 鶴帰る天のほころび縫ふやうに

58 進水の軍艦マーチ青葉潮

59 戦なき国に兜と武者のぼり

60 薩摩弁聞きたくて買ふかぶら漬


※高平保子句集『船団』(3) に続きます。


高平保子句集『船団』(1) 1〜20
https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12836193037.html