1/8毎日俳壇・歌壇。
★病室より眺む団地の干蒲団静 千葉市 木村史子
★あはあはと山より低きしぐれ虹 西宮市 平田あい
★星の無き独りの夜や火恋し 日高市 落合清子
★小春日やマスターの飼う九官鳥 国立市 佐藤 建
(西村和子選)
★山茶花やかの指切は果たされず 東京 高木靖之
★戦況にはじまるニュース毛糸編む 新居浜市 今井 忍
〈評より〉戦争のニュースと、平和な日常との落差。現代人のやるせなさを具体的に提示した。
★雪雲の晴れて伊吹の真白なる 長浜市 中島正則
★枇杷の花陽のあるうちに小買物 坂戸市 沼井和江
★滞るもの置き去りに冬の雨 名古屋市 鈴木幸絵
★補聴器の外れしままの日向ぼこ 奈良 野上千俊
★結局は妻が立ちたる掘炬燵 郡山市 井上 博
★顔ぶれは昨日と同じ日向ぼこ 甲府市 村田一広
※村田さん、短歌にも入選。
★冬日和隣人今日もしづかなる 大阪市 吉田昌之
★朝掻き夕に掃くや散紅葉 岡崎市 加藤幸男②
(井上康明選)
★初雪のなかへ離陸の機体消ゆ いわき市 四宮公男
★凩や母の匂ひの葛根湯 東京 徳原伸吉
★寒柝の一打につづく子等の声 東京 山口治子
★弾込めてより猟銃の艶を増す 北本市 萩原行博②
★開眼の墓に集まる冬の雲 久留米市 持地恒美
★空海の着きし浜辺や冬怒濤 伊賀市 福沢義男
★手作りの紙芝居なりクリスマス 狭山市 小俣友里
(片山由美子選)
★遊ぶ子の落葉の匂ひたのもしき 町田市 枝澤聖文
〈評より〉「たのもしき」に、庭を駆け回る子の元気な様子がうかがえる。晴れた日の香ばしい落葉の匂い。
★亡き人のことには触れず忘年会 志木市 谷村康志
★ひと口のあとは一気に玉子酒 和歌山市 曽根澄子
★菊花展入口前のはやにほふ 羽生市 今成公江
★パスワードに残る犬の名冬銀河 犬山市 村上洋子
★突堤に釣り人ひとり寒夕焼 国分寺市 野々村澄夫
★おでんさへあれば何とかなる夕餉 海南市 塚月凡太
(米川千嘉子選)
★友達の年齢層は年を追うごとに広がる敬語まじりに 横浜市 友常甘酢
★本当は一番前で見たかろう酒注ぎまわる新婦の父は 東京 富見井高志
★吾に合いて老眼鏡を掛けるとき亡夫の温もり耳の上にあり 大阪市 森川慶子
★小春日の木漏れ日をゆく車椅子しあわせはいつもゆっくり進む 浜松市 久野茂樹
(加藤治郎選)
★葉の上の丸々とした白露が光の羽を四方にひらく 摂津市 石少山裏裏
★雪の日の回転木馬はぎこちなく子供ひとりを静かに揺らす 大津市 世田夏雪
★職業はやや背伸びして農業と書けり百坪の家庭菜園 霧島市 秋野三歩
(水原紫苑選)
★たましいは宿るのではなく在るのだと夕映のなか谺する木々 平塚市 芝澤 樹
★ヴェネチアングラス見つめている真夜のどこからか始まる明晰夢 松本市 飛 和
★遊覧船はあはれ白鳥の姿して湖の中にて飼ひ殺す 甲府市 村田一広
(伊藤一彦選)
★ウクライナ、ガザ、ジミン、オスプレイ 大谷さんに夢中な理由 鎌倉市 佐々木 眞
★現在形だけのこころで生きている猫のあくびはいつも全力 千葉市 芍薬