1/7朝日俳壇・歌壇。長崎県からの入選者多数😄。

◎小林貴子選

★食卓に骨の脈はふ聖夜かな (浜松市)小澤あり須

★デコピンに微笑みのわく冬うらら (日高市)岩野春江

 ※デコピンは大谷選手の愛犬の名前。

★学ぶことみな楽しくて雪明り (鹿角市)北村孝子 

★煤逃げの類集ひけり理髪店 (さいたま市)大慈彌英二


◎長谷川櫂選

★象の名は花子と言へり開戦日 (富士宮市)渡邉春生

 【評より】花子は戦時中、上野動物園で毒入りの餌を拒んで餓死した象。

★風花のひとひら風をかけのぼる (高山市)直井照男

★うそ寒や唇動きさやうなら (西海市)前田一草 

★綿虫のひとりぼつちに綿虫来 (川口市)青柳 悠 

★良き事のあれば好(よ)き音落葉踏む (今治市)横田青天子

★この縁にかつては母と日向ぼこ (狭山市)宮倉浅子 

★冬ともし針一本のかげばふし (彦根市)阿知波裕子

★人類の末期の如き年の暮 (筑紫野市)二宮正博


◎大串章選

★極楽も地獄も忘れ日向ぼこ (長崎市)下道信雄

★毎日が戦火のニュース年暮るる (前橋市)荻原葉月

★出征の駅は無人や開戦日 (太田市)吉部修一

★被爆樹の癒えぬ哀しみ虎落笛 (長崎市)佐々木光博

★路地裏の居酒屋で呑むサンタかな (千葉市)石野 勤 

★放牧の牛を帰して山眠る (神戸市)末永拓男

★冬耕機カーブ巧みに過ぎ行けり (ドイツ)ハルツォーク洋子

★古民家の一日体験落葉掃き (鎌倉市)小椋昭夫

★がん病棟試し歩きの冬帽子 (立川市)笹間茂


◎高山れおな選

★をちこちに狐火浮かぶ開戦日 (長崎県波佐見町)川辺酸模

★くるくるくるきたきたきた大嚏 (佐倉市)葛西茂美 

★古きもの炎にかへし焚火かな (南足柄市)海野 優

★横須賀にロナルド・レーガン聖夜の灯 (川崎市)神村謙二

★寒林は大き鳥籠朝日差す (北本市)萩原行博

★白鳥の誘致議決す村議会 (横浜市)我妻幸男

★初場所や髪に稲穂の芸者衆 (さいたま市)田中つかさ

★枯菊を五右衛門風呂の種火とす (東京都中野区)庄司敏文

★らつきようを咲かせて島に漁師老ゆ (松山市)杉山 望

★湯豆腐のくづれ独りといふ実感 (春日部市)斉藤とし彦

◎永田和宏選

★妻は泣きわれは視線に文字を打つ午後の病室蝶も鳩も来ず (和泉市)長尾幹也

 【評より】遂に視線入力機器を使わざるを得なくなった長尾さん。傍らに妻は泣くも一心に文字を打ち続ける。

 ※長尾さんについては↓をどうぞ。

https://www.asahi.com/sp/articles/ASQBJ3JX5Q9QUCVL031.html

★半紙折るように畳に手を置いてなんてきれいなおじぎするひと (新潟市)太田千鶴子

★つくる人売る人買ふ人使ふ人ありてぞ武器に殺さるる人 (焼津市)増田謙一郎

☆渡米時の大志破れて短歌あり我には歌の残されしのみ (アメリカ)郷 隼人 

 ※高野公彦共選。

☆入院は長引くらしと父のメール時雨れてパリは冬に入りゆく (フランス)佐久間尚子

 ※佐佐木幸綱共選。

★おとうの分これおかあの分団栗で遊ぶ子供の親亡きを聞く (狭山市)朝日和信

★路地裏でキスを交はせしあの頃は防犯カメラなくてよかった (対馬市)神宮斉之


◎馬場あき子選

★クリスマスの光の中の楽団の金管楽器の奏でるひかり (奈良市)山添聖子

★歩道橋に「津波ここまで」と印あり怖さ身に沁む宮古に訪いて (横浜市)大曽根藤子

★手をつなぎつながない手のスマホ見る今じゃデートもタイパ重視か (下関市)下田康子

 ※「タイパ」=タイムパフォーマンスの略。日本語では「時間対効果」、費やした時間に対する満足度の度合いを示す言葉。 短時間で高い効果満足度が得られた場合は「タイパが良い、高い」、反対に長時間を費やしても満足度が低いと「タイパが悪い、低い」と表す。

★寒燈の畜舎に流すクラシック夜明けの里の若き移住者 (小城市)福地由親

★深夜でも山の向こうの急患診に雪踏みしめ行った軍医の父は (八尾市)宮川一樹

★小鳥には居心地のよき枝あるらむ糞の跡しるきひとところあり (多摩市)豊間根則道

★白神の鹿目撃が三倍に増えて危うし世界遺産も (五所川原市)戸沢大二郎

★黄昏に隻脚(せっきゃく)に佇つ白鷺の影むらさきに静まる湖畔 (箕面市)大野美恵子


◎佐佐木幸綱選

★がまくんとかえるくんとの友情を読みて小二の教室あたたかし (三重県)藤井恵子

 【評】11月に他界した詩人・三木卓氏を追悼して、氏の翻訳になる物語「お手紙」(小二の国語教科書に掲載)をうたう。

★『まだ生きていたのですよ』と読者へのメッセ ージ代りの短歌を送る (アメリカ)郷 隼人

★師匠亡きあとはじめての出世だたみ五歳の孫の脱ぎし袴を (東京都)常磐津津紫摩

 【評】「出世だたみ」は袴のたたみ方。

★血を流す子ら抱き走る男たちガザの悲鳴が茶の間にひびく (一宮市)園部洋子

★ブロンズの魁皇像が電飾のピンクに染まり裸体つやめく (直方市)永井雅子 

◎高野公彦選

★戦闘の再開報じる一面に途中で気付き配達止まる (甲州市)麻生 孝

★亡くなった入居者の部屋訪れて手を合わせいる嫗百二歲 (横浜市)太田克宏

★お隣へ聞こえるように雨戸閉む今日も無事よと力をこめて (さいたま市)光岡恵美子

★心なきAIこころあるごとき言葉発する次つぎ無尽 (北九州市)嶋津裕子