俳人協会刊「俳句カレンダー」7月。
★鉾の稚児帝のごとく抱かれけり 古舘曹人
※古舘曹人さん=大正9年(1920)~平成22年(2010)。90歳没。佐賀県杵島郡生れ(東京都在住)。旧制五高・東京帝大法学部出身。山口青邨に師事。「夏草」同人。青邨没後「夏草」代表。同人誌「子午線」を創刊。俳人協会顧問。夏草賞・第19回俳人協会賞受賞。句集『ノサップ岬』『砂の音』『樹下石上』『青亭』『繍線菊』、著作『甦る蕪村』『大根の葉』『乃木坂縦横』『木屋利右衛門』ほか。
★滝の壁鎧のごとく濡れにけり
★森昏く呪文の木の實しきりにて
★虫の戸を叩けば妻の灯がともる
★霧湧くやほのかに妻が近よりぬ
★繍線菊(しもつけ)やあの世に詫びにゆくつもり
★七月や鎖骨を滑る水の玉 沼田真知栖
★みずたまりポチャンとつゆがあける音 工藤絵真(小3)
★夕立のあとの杉山匂ひけり 小野瀬まこと
★灯を消して星へと返す金亀子 斎藤恒子
★峰入りの少年白衣に覚悟みえ 大浦郁子
★切り通しの鑿痕粗し滴れる 河野亘子
★甚平や見事一族財成さず 川出泰子
★少女らの浴衣にほへり路地の宵 青木道子
★あたらしき茣蓙の香りや籠枕 足立歩久
★失敗は失敗として髪洗ふ 吉澤やす子
★XとУから逃避夏蜜柑 殿川ゆり(中3)
★金魚にもある溜息のやうなもの 杉田菜穂
★弟の虫とりあみにつかまった 高尾将真(小4)
★背番号3が拳を炎天へ 浅田裕也(高3)
★潮騒のただ聞こえをり昼寝覚 中村千久
★落蟬の翅をひらけば山河透き 岸原清行
★メモを取る巡査指まで日焼けして 河原地英武
★遠泳や水平線が逃げて行く 村田 浩
★恐竜絵本はしから借りて夏休 鈴木尚子
★浜木綿や沖に白帆の巡航船 石橋澄江