⅕山梨新報「しんぽう文芸」山梨の句友、田辺義樹さん報。

◎俳壇 山田省吾選

★山墓の嵩なす落葉踏みしめて 富士吉田 小林祥子

★冬草に余音残して貨車の列 大月 小俣義人

★寺巡り行く先々の照紅葉 甲府 日向鏡子

★富士の水入れて湯々婆(ゆたんぽ)沸かしけり 富士吉田 青柳時子

★終バスを待つ北風の停留所 甲府 中村 彰

★風に乗り逆上がり行く柿落葉 笛吹 石倉絹子

★初景色終の住処の晴れ晴れと 甲府 伊藤隆雄

★穏やかな木喰仏やのつペ汁 都留 松沢節子

★凍蝶の舞ひ立つ気概石舞台 甲斐 松田健嗣

★突と吾の頬に触れ行く雪ばんば 都留 前田智子

★愛着の手編みセーター繕ふ夜 甲府 桑原博子

★大いなる冬木の影や奥之院 甲府 村松幸治

★目標の片付け終へぬ年の暮 甲府 遠藤武文

★帰り花うら寂しくて健気かな 富士河口湖 渡邊康久

★清し香や白菜漬に上がる水 上野原 宮野 始


◎柳壇 坂田よし江選

★子に賭ける世帯を譲るタイミング 甲州 鶴田甲敬      

★あの時代母の笑顔が生きる糧 山梨 松下時子     

★チャンネルを取り合う孫と爺の夜 山梨 宮本富子

★一服の煙草も気兼ね木の陰で 中央 志田末男

★八十路越え気力が体支えてる 甲府 遠藤武文

★ばあちゃんになったと娘から弾む声 甲府 小沢春美

★良い絵図を思い描いて夢の旅 市川三郷 遠藤みどり

★花野行く音痴もハミングしたくなり 甲斐 松田健嗣

★同年兵これからじゃんけ今青春 甲府 水橋 昭

★旅の空独りぼっちの夜が長い 甲府 米山八重子

★懐メロと演歌集めた録画見る 群馬 高橋 空

★アルバムに今も笑顔の夫の影 甲州 武井透江

★仏壇の親はいつでも微笑んで 大月 和田一成


◎歌壇 祢津達子選

★頬っぺを突き刺すよな空風釜無の土手北へ北へと中央 志田末男

★小春日の庭の静けさふっと揺らし干しいる大豆の弾けたる音 中央 前田良一

★天空に月白々と移りゆく唯静謐の青黒い庭 市川三郷 米村昭三

★老いたるも尚起て撃ての応援歌〆はこうなる初無尽会 甲斐 松田健嗣

★帰郷して茄子作り励む若者に産地の人等の豊作の知恵 昭和 鮎川 栄

★陽の温みまだ残ってる座布団を部屋に並べて来客を待つ 甲斐 山本初子 

★「水あれば」と気候難民訴えるどうする日本我等すべきこと 甲府 天野 正 

★弔いし友の面影思いつつ星ふる土手道くれぐれ帰る 甲府 高瀬孝人 

★老松に初日のひかり差し込みて高く聞こえる雀らの声 甲府 横森千代乃

★卒寿なる吾が身体の衰えを止めて生きんと日々の精進 甲斐 大石保夫

★冬近し燃え尽きるよな夕焼けに背中押されて思う残り日 甲州 秋野正彰

★君からの別れを告げられしあの日の俺を見ていた燃える夕焼け 埼玉 伊藤一男 

★夫からの指輪をしての講演会一緒で楽し午後の外出 甲斐 深沢介子

★木枯らしの吹き来る庭に音も無く崩れ散りゆく紅い山茶花 富士吉田 中村 蓮 

★橋の下鯉三匹が寄り添って藻のかげに潜む冷たかろうに 笛吹 末木義久

★映像に見る泣き叫ぶ子供等にせめて届けて安らぐ日々を 笛吹 矢崎博子

★寒空にイルミネーション光りあう帰宅ラッシュの山の手通り 甲府 糠信冨貴子 

★遺すもの考えた時何にも無く今から学び歌集にせんと 甲府 遠藤武文

★冬の陽を追いかけて干したる白菜を気持ちを込めて漬ける最終 昭和 河田よしゑ