俳人協会発行2024年俳句カレンダー 4月。

(短冊の俳句)

★花仰ぐまた別の町別の朝  坂本宮尾


★葱坊主みんな丸くてみな睡し  鈴木直充


※坂本宮尾さん=1945年大連生まれ。東京女子大学の白塔会で山口青邨の指導を受けて俳句を始める。英文学者。東洋大学名誉教授。俳人協会評議員。第6回桂信子賞受賞。句集に「天動説」「木馬の螺子」など。


※鈴木直充さん=昭和24山形県生まれ。昭和48年春燈俳句会入会。平成4年春燈新人賞受賞。句集『素影』、『寸景』。「春燈」主宰、俳人協会理事、塔の会会員、素の会会員。

★生涯に職歴ひとつ初桜 笹瀬節子

★制服のボタンが固い入学式 片桐日菜乃(中1)

★草餅や齢かさねて面白く 下坂速穂

★梨の花平らに咲いて昼の月 大石よし子

★ほぐれては内なる白を紫木蓮 福山良子

★春昼やうつらうつらと古着商 小河洋二

★羊毛刈る膚擦れ擦れの鋏音 平野淑子

★春の夜のふはりと厚き和紙の耳 樋口ひろみ

★湿原をゆつたり昇る春の月 宮田春夢子

★渡り行く谷や比叡の鐘朧 鈴木保美江

★丁度良き隔たりにゐて春の闇 福神規子

★花の雨仏足石に貝と魚 吉田祥子

★旅ごころ花の便りのあらばなほ 山本幹夫

★あけぼのの色を授かり桜鯛 吉川智子

★満ち潮に鱏(えい)の乗りくる干潟かな 小林憲正

★蛤の水に浮かべし値札かな 横井 遥

★教室をはみ出す声やチューリップ 飯塚寿江

★あかがねの胸てらてらと甘茶仏 古木俊子

★廃村の宙に満ちくる百千鳥 たなかまさこ

★囀や子に一周のポニーの背 鈴木まゆ

★弓なりの細枝弾けて鳥の恋 国松恵子

★一丁目一の一の木鴉の巣 田中治子

★春の駒影を大きく跳ねにけり 大村泰子

★虚子詠みし山の停車場竹の秋 堤 信彦

★暮れてなほ菜の花明り垣根越し中根 健

★菜種梅雨ビルの先端雲の中 永田由子

★蝶あをく絵本あかりに翅たたむ 上野龍子

★七色を一つに束ね風車 藤田明子(阿吽)

★ふらここを蹴らうか風になれるなら 高久久美子

★仔牛には仔牛の匂ひ春の蠅 桜井 伸

★巣に戻る蜜蜂帯を引くごとく 曽根 満

★四十雀夫を呼ぶ間に巣立ちけり 西村世都子

★二三羽は胸まだ白き雀の子 乾 真紀子

★倒木が塞ぐ山道落し角 月花ふみ子

★酒・金におぼれふらつく壬生狂言 船田恵津子

★ライラック北国の闇濃く匂ふ 久保田育代

★谿深し春りんだうの小さければ 坂口緑志

★母と子の指切げんまん葱坊主 川崎房恵

★村歌舞伎了へて総出の種おろし 石川青聖

★水槽のうつぼ八十八夜寒 倉林美保

★忘れ霜降るか妙義は夜も蒼く 松原ふみ子

★胎の子の心音確と緑立つ 草野道子

★惜春や園に鳥語とオルゴール 和田洋文