俳人協会「俳句カレンダー」3月。

★雁帰る攫はれたくもある日かな 大石悦子

 「攫はれたくもある日かな」と、何とも意味深な文句。こういうのは女性でなければ詠めない。雁が北へ帰ってゆく春の日、誰か自分を攫くれないだろうか、と言うのです。それとも何かから解放されたいのか…。帰る雁を見ている時にふっと感じた心情。同じ句集に「雁渡しいのちいつさい吹かれをり」があり、こちらは雁が渡って来る秋の句。

★海光のとどく店先吊し雛 粟生せつ子

★キッチンにおかず事典や水温む 内田啓子

★山を出て山を映せり春の水 鈴木 勉

★名残雪純情といふもどかしさ 德田千鶴子

★飴なめて脳はたらかす春炬燵 菊地光子

★一山家雲雀の空に近く住む 村手圭子

★春泥の靴産院に脱がれあり 池田ブランコ

★挿木して余りある日を地に遊ぶ 青嶋三千代

★びょういんでママと二人のはる休み 金森蒼人(小2)

★春の海さんいちいちを忘れない 高蔦莉里花(高1)

★村の名の変はりし空を鳥帰る 日下野仁美

★ひかり摘み風摘み蕨つみにけり 鈴木幾久

★身の程を知りて身軽しすみれ草 出田邦山