俳句ポスト365、兼題「霜」の回、中級者以上結果発表。特選3句。

★鳥の死に清らな膜として霜は  沖原イヲ

 〜(夏井いつき先生の選評。以下同じ)「鳥」としか書いていませんが、烏のような大きな鳥ではなく、雀や鵙、逃げたインコ等の小さい鳥を思いました。「鳥の死骸」と書けば即物的な意味になりますが、「鳥の死」には抽象的な意味も加わります。「清らな膜」は「霜」の実態でありつつ、死んだ鳥への祈りとも読めます。「清らな膜として霜は」の後の、しんしんと冷たく美しい余白に詩があります。


駐禁の紙にも霜の降りにけり  白猫のあくび

 「駐禁の紙」という俗な素材を使い、「霜」のリアリティを描きました。「~にも」は散文的になりがちな措辞ですが、この場合は、「駐禁の紙」が貼られたフロントガラスにびっしりついた霜を映像化します。昨日からずっと駐禁の場所に置かれている車、「紙」にまで育っている霜。切字「けり」は、今朝ハッと気づいた詠嘆として十二分に機能しています。


失職や霜の鉄扉に指の痕  百瀬一兎

 季語ではない名詞を「や」と詠嘆する上五は、中七下五とのバランスが難しい型ですが、巧く構成しました。「失職や」は大いなる溜息を含んだ詠嘆。ここから映像へきっぱりと切り替えた判断が的確です。「霜の鉄扉」は、自分の仕事場でなくなる場所の門扉でしょうか。「指の痕」という映像が作者の心情をも伝え、ドキュメンタリー映画のような味わいの一句です。


※次回の兼題は「蜜柑」。(三冬/植物。傍題:蜜柑山・蜜柑畑)

 

 ミカン科のうち、温州蜜柑の類、あるいは柑橘類を総称していう。甘酸っぱい果汁に富み、美味しい。古くから日本人に親しまれている果実のひとつで、冬には欠かせない。
 傍題の使用も可だが、まずは兼題と真正面から取り組んでみてください。締め切りは、2024年01月19日。