12/25長崎新聞「郷土文芸」(4) 「あわい」欄記事。

▼「海港」88号(コスモス短歌会長崎支部 年2回の発行)


 28人の作品を掲載。巻頭詠は、前田泰隆さんの20首。「真清水のひびき」と題し、災害ボランティアの先駆けとなった故宮本秀利さんの生涯を詠み込んだ。


★ボランティアかつ『現代の名工』の宮本さんを三十一文字に

★真清水のひびきのやうな去私の人宮本秀利氏ふるさとの誇り


 など。題詠「引」には10人が10首ずつ出詠、発想の妙を見せた。


★台風を引き寄せつつも晴れの日に来たりて去りき精霊船は(坂井寿々子)

★粘土捏ね引き伸ばしたり丸めたり器のはずがガンダムになる(嶋田千代子)

★亡き姑の愛用したる茶簞笥の引き戸、引き出しふと偲ぶなり(間由美子)


 など。問い合わせは立石千代女さん(電0957・68・3559)。

▼「歌の実」冬号(歌の実短歌会編集本部・長崎市)発行。


 巻頭文は竹下正彦さんの「木通(あけび)」。長崎を歌った流行歌や西海市崎戸町の思い出などに触れている。会員作品は、


★若いころ何かスポーツやりました いいえ戦の真似事ばかり(谷頭貞夫)

★久々の誕生会の会食に集える喜びしみじみ思う(谷口桂子)

★ 午前四時東に低く生れたる明星青き光を放つ(尾田貢)


 など。問い合わせは歌の実編集人の曽我部美千子さん(電095・843・0107)。

▼「あすなろ」202号(上川原緑編集人)刊行。 


 巻頭の特別作品は、「星雲」代表で日本短歌雑誌連盟理事長の林田恒浩さんが「サハリン遠く」と題した15首を寄せた。


★母の胸にだかれて島を逃れ たるかの夏の日の目眩くなり

★引き揚げて幼きころを過ごしたる長崎県南高来郡西郷村 遥けし


 など。同人作品は、


★夕暮れの厨にトマトをすっぱりと切れば真っ赤なふたつのハート(荒木弥生)

★静寂に池は眠れる月の夜ひとり佇む瞑想の寺(井関淳子)

★親やーめたバック転して叫びたいできないけれどバック 転もね(浦口妙子)

★その昔新人類と呼ばれたりZ世代と今は呼ばるる(永田保子)


 など。堀田武弘さんの研究シリーズ「被爆八十年に向けて 原爆を詠んだ長崎の歌人たち(16)」は、笹山筆野(1910〜2001年)、島内八郎(1897〜1983年)らを取り上げた。

 問い合わせはあすなろ社(電095・827・ 5491)。

▼「俳句年鑑2024年度版」(角川文化振興財団)の「諸家自選五句」で、本県から荒井千佐代さんと前川弘明さんが掲載されている。


★東風吹くや釘となるまで木を削り(荒井千佐代)

★復活祭鯛の尻尾を食べてみ る(前川弘明)


 など。 


▼宮崎県社会福祉協議会主催の本年度「心豊かに歌う全国ふれあい短歌大会」要介護・要支援高齢者の部で、諫早市の浦田和視さん(97)優秀賞受賞。


★「あんた誰」呆けた振りして子供らにギャグと判って ほら大目玉


 本県からはこのほか、雲仙市の本田ミツヨさん(101)が佳作入選。


★肉が好き何でもかめる百一歳何でも食べて百二歳まで


 同大会は「介護」という言葉を介してつながる人を対象に作品を募集。今年は3064首が寄せられ、本県からの応募は39首。歌人の伊藤一彦さんが選考し、応募者全員の歌を1首ずつ掲載した短歌集「老いて歌おう 全国版」第22集が刊行された。

 問い合わせは同協議会(0985・31・9630)。


(「あわい」記事は犬塚泉さん)