12/25長崎新聞「郷土文芸」(1) 俳壇・歌壇・柳壇。

◎俳壇 前川弘明選

★裸木の正直すぎる本音かな 長崎 三宅三智夫 

 (評)葉を落としてしまった木はすっきりと立つ。風が吹き雨が降っても、その姿をまっすぐに立つ。

★獣らの呼び合う気配小夜時雨 佐世保 相川正敏 

★冬の月飛べない象の調教師 長崎 入口靖子 

 (評より)飛べない象を飛べと叱咤している調教師。冬の月がじっと見ている。

 ※何かを暗示しているような句。

★十二月無職の我に予定あり 諫早 石川総一郎

★潮満ちて潜る一羽や磯千鳥 平戸 大浦千惠子

★冬林檎名画のごとく置きにけり 長与 相川光正

★月冴ゆるウッドベースの低き音 長崎 入口弘德

★二胡肩にかかえ直して冬日和 佐世保 宮本由美子

★海の面を遊ぶ冬日の柔らかき 長崎 林 倫子

★島裏は波の断崖寒の月 平戸 本川 誠

★十二月八日いのちの風が吹く 諫早 詩狩 青 

★老妻の子犬のごときくしゃみかな 諫早 野崎治行

★影の濃き山の稜線冬夕焼 西海 田川育枝

★柚子風呂に浸かりて寒を迎えうつ 平戸 永田米吉

★一つずつ遺影の煤を払いけり 西海 原田 覺 

★モノクロの野戦病院十二月 長崎 塩田ひさを

★空しさを心の隅に冬の暮れ 南島原 末吉貴浩

★被災地へおでん屋台を運べぬか 五島 松本隆司

【選者吟】ぷくぷくと聖夜の金魚夢を吹く


◎歌壇 長島洋子選

★群青の潮に逆らひつぎつぎと漁船越えゆく早崎の瀬戸 南島原 松永文則

★新しき年が来たれば新しき歌を綴らん清き心で 佐世保 川口栄子 

★温かきオレンジ色に空染まり夜明けのひとときしあわせになる 雲仙 鍬塚キヌエ 

★老いて子に逆らう時の寂しさに音たてて踏む銀杏落葉を 長崎 松本テツ子

★夕暮れを時雨に濡るる赤きバラ耐えきれなくて地に崩れたり 長崎 工藤洋六 

★大木になればまあるく成るという冬陽にキラキラ柊の葉よ 松浦 長谷智香江

★古里も若者が減り田畑荒れまして棚田は山となりゆく 諫早 藤林東容

★諸事情がゆるさずなればながくせし歌壇投稿これにて終える 諫早 井上俊英

★咳き込めば吾が背とんとんさする孫帰る日近き添い寝の床に 長崎 高西芳弥

★何事もありがたきことと受け止めよ亡母の笑顔が吾を励ます 佐々 敦賀節子 

★冬日さす庭に寝そべる柴犬の黒き丸鼻あかず見ており 佐世保 友廣ヒデヨ 

★久方に会ひし老母と短歌談義夜更けも忘れ空しらじらと 諫早 山口美智子

【選者詠】をりをりの歓び哀しみつづられて届きし葉書ぞわが掌に重し


◎柳壇 井上万歩選 題「ユーモア」

★ユーモアが通じる嫁と丸く住む 長崎 本多政子

★ユーモアに紛れて本音顔を出す 大村 永益泰弘 

★ユーモアのピエロ哀愁ただよわせ 長崎 三瀬則子

★ユーモアの中に教えもある落語 長崎 西畑伸二 

★ユーモアの裏に本音をひとつまみ 東彼杵 沖永愼吾


◎ジュニア俳壇 江良修選

★秋風や木々も始める衣替え 佐世保・東明中2 山口 奏

★雨上がり紅葉の舟達流れてく 東明中2 山中よつば

★秋の山色とりどりの衣着る 東明中1 宇都光惺

★道の駅店頭並ぶ早生みかん 佐世保・祇園中1 黒田基巴

★夕暮れの風にゆられる彼岸花 祇園中1 三村礼音


◎ジュニア歌壇 杉山幸子選

★(秀逸)頑張ったみんなで音とり難しいやっと見つけたちょうどいい音 佐世保・東明中3 村上直悠

★目の前の指揮者の笑顔受けとってさあ歌いだすこの声響け 佐世保・鹿町中3 石田乙葉

★拍手消え次は僕らが歌う番鳥の鳴く声葉の落ちる音 鹿町中3 豊嶋康眞

★虫の声勉強中に鳴り響く自分専用応援ソング 鹿町中3 藤野稜太

★ある朝におち葉一つがふかれてく赤信号も無視して通過 鹿町中2 小川峻弥 

★おはようと挨拶交わす友達が一番大事気づく今 佐世保・崎辺中3 井手日菜多

★三時間歩き回って看板を探して絆深められたよ 崎辺中1 丸木 純

★「ふるさと」の歌詞をしるした模造紙に注意と努力の書き込み多し 東明中3 楠本いろは 

★秋到来祖母が切り分け食べる柿味覚が変わり甘く感じる 東明中3 井手希夢

★夕暮れに色なき風が頬をかすめ香る匂いはキンモクセイだ 東明中3 出口暖斗

★緊張で鍵盤押した手が震え丁寧に押す最後の音を 東明中3 迎 笑心


※「グループ作品」その他は次のページに。