年間賞は、昨年12月から今年11月に西日本読者文芸欄に掲載された作品が対象。
第一席〜三席の入賞者には来年1月、西日本新聞社から賞が贈られる。
◎俳句 星野椿選
〈第二席〉一切を水に流して墓洗ふ 福岡中 白井道義
【評】この世では色々なことがあったかも知れないが、互いに許し合う時が来た。到底水に流せないような出来事も、墓を洗いつつそれも人生の一齣と、心を無にして仏様と向き合うのであった。
〈第三席〉方丈に正座して観る紅葉かな 太宰府 入江眞己子 【評】大寺の紅葉はあまりにも美しい。石庭に配さ れた紅葉の静けさが心を落ちつかせ、静寂という無の心となった。こんなにも天地は自由なのである。品格と威厳の調和に心のゆとりも生まれるのであった。
★初釜に迷ひし帯の艶やかに 小倉南 上月ひろし
★去る人に来る人に散る紅葉かな 飯塚 野見山洋子
★母の日の母は今でも針通す 宗像 川口茂則
★去りゆきし数多の知己や天の川 小郡 永田良一
★唐辛子音たてさうに乾きをり 久留米 秋吉鈴子
★幽霊の掛軸出番夏の寺 伊万里 田中秋子
★扇おく心に年を重ねけり
須恵 武井美代子 糸島 宗久翆
◎俳句 秋尾敏選
〈第一席〉踊の輪夜空のねじを巻いている 筑紫野 横山美惠子
【評】奇抜な発想の句である。櫓をめぐる盆踊の輪が、夜空を回す原動力になっている、と。夜が更けて、星の位置がだいぶ動いたということもあるのだろう。
〈第二席〉逃水を掬ふ港の観覧車 佐世保 牛飼瑞栄
【評】写生とも読めるがウイットの句。「逃水」は観覧車の中から見ているはず。上昇し始めるとそれが消えたのである。「港」という状況設定が利いている。
〈第三席〉荷を降ろしまだ二駅もある帰省 福津 藤吉靖信
【評】故郷の駅が近づき、心がはやって網棚から荷物を降ろしたのだが、その駅までにはまだ二駅もあると。行為を叙述して、気持ちをしっかり伝えている。
★軽トラに秋風も載せボランティア 久留米 桑原美知子
★早弁を許す校風涼新た 福岡博 奈良崎博秋
★ランニング言葉涼しく通りすぐ 飯塚 野見山洋子②
★グランドの誰も仰がぬ夏の空 古賀 吉良 修
★雨の輪のあはひあはひの海月かな 福岡城 犬山裕之
★夏祭チューバ五本の横並び 福岡博 神田たみ子
◎短歌 栗木京子選
〈第一席〉佐賀平野の秋天に浮く熱気球ミサイル放つ異国を憂ふ 宇美 井上照男
【評】ウクライナやガザ地区などの戦闘は続き、日本でも異国からのミサイルに恐怖を覚える日々。のどかな上句と重苦しい下句との対比がリアルに迫る。
〈第二席〉何百の薄羽黄蜻蛉くれなゐの空へ銀河をつくりゆくな 大野城 染川ゆり
★「大谷も三振するよ」妻は言う短歌大会三振われに 宗像 新倉正成
★ユーミンの楽譜や本など持ち帰る来月決まった実家の解体 行橋 木村葉子
★オムツいやパンツがいいと窓際に仁王立ちする二歳児の自我 糸島 森脇由利子
★焼け跡を歩きて売りし高瀬飴母の戦後史飽きず聞きをり 福岡城 藤本きひろ
★「私の看護観」なる文集に三十年前のわたしの気負ひ 糸島 瀬戸口真澄
◎短歌 伊藤一彦選
★はつ夏の光纏ひて潮満つる海に来てますあなたの忌日 福岡東 堺 多鶴
★青空にぷかりと雲の平和なり傍若無人の顔はなし 福岡城 秋好智恵子
◎川柳 森中惠美子選
〈第一席〉手を洗う子は祈ってるように見え 八女 吉原鐵志
〈第二席〉誤診した医者と一緒にのんでいる 小郡 加賀田干拓
〈第三席〉希望という言葉が好きになる老後 福岡早 出雲一夫
★どの花も天に向って咲く元気 柳川 横山 保
★八月の水を欲しがる佛たち 久留米 江上春子
◎詩 平田俊子選
〈第一席〉「自己紹介」杵築 亀井満里
わたくし 脳梗塞になりまして
そして 右片麻痺の人となりまして
あげく 何もできない人となりまして
やっと左手に杖を持ち
Katann kotonnと何とかkanntoka歩けるようになったとき
やぁ ! 元気 ?
向こうから声をかけてきたのは詩でした
まぁ何とか・・・
すると 詩がいいます
人間生きていればnanntokanaruものさ
それで私も詩というものを書いてみようと
まづは自己紹介と 私脳梗塞となりまして
右片麻痺となりまして
何もできない人となりまして それでも わたくしはわたくしでして
わたくしをやめることはできない 私の自己紹介でした
が、これって詩ですか ?
Nanntokanaruものさ