12/25の「西日本読者文芸」は第69回年間賞の発表でした。

 年間賞は、昨年12月から今年11月に西日本読者文芸欄に掲載された作品が対象。

 第一席〜三席の入賞者には来年1月、西日本新聞社から賞が贈られる。


◎俳句 星野椿選

〈第二席〉一切を水に流して墓洗ふ 福岡中 白井道義

 【評】この世では色々なことがあったかも知れないが、互いに許し合う時が来た。到底水に流せないような出来事も、墓を洗いつつそれも人生の一齣と、心を無にして仏様と向き合うのであった。

〈第三席〉方丈に正座して観る紅葉かな 太宰府 入江眞己子  【評】大寺の紅葉はあまりにも美しい。石庭に配さ れた紅葉の静けさが心を落ちつかせ、静寂という無の心となった。こんなにも天地は自由なのである。品格と威厳の調和に心のゆとりも生まれるのであった。

★初釜に迷ひし帯の艶やかに 小倉南 上月ひろし

★去る人に来る人に散る紅葉かな 飯塚 野見山洋子

★母の日の母は今でも針通す 宗像 川口茂則

★去りゆきし数多の知己や天の川 小郡 永田良一

★唐辛子音たてさうに乾きをり 久留米 秋吉鈴子

★幽霊の掛軸出番夏の寺 伊万里 田中秋子

★扇おく心に年を重ねけり

須恵 武井美代子 糸島 宗久翆


◎俳句 秋尾敏選

〈第一席〉踊の輪夜空のねじを巻いている 筑紫野 横山美惠子 

 【評】奇抜な発想の句である。櫓をめぐる盆踊の輪が、夜空を回す原動力になっている、と。夜が更けて、星の位置がだいぶ動いたということもあるのだろう。

〈第二席〉逃水を掬ふ港の観覧車 佐世保 牛飼瑞栄

 【評】写生とも読めるがウイットの句。「逃水」は観覧車の中から見ているはず。上昇し始めるとそれが消えたのである。「港」という状況設定が利いている。

〈第三席〉荷を降ろしまだ二駅もある帰省 福津 藤吉靖信

 【評】故郷の駅が近づき、心がはやって網棚から荷物を降ろしたのだが、その駅までにはまだ二駅もあると。行為を叙述して、気持ちをしっかり伝えている。

★軽トラに秋風も載せボランティア 久留米 桑原美知子

★早弁を許す校風涼新た 福岡博 奈良崎博秋

★ランニング言葉涼しく通りすぐ 飯塚 野見山洋子②

★グランドの誰も仰がぬ夏の空 古賀 吉良 修

★雨の輪のあはひあはひの海月かな 福岡城 犬山裕之

★夏祭チューバ五本の横並び 福岡博 神田たみ子


◎短歌 栗木京子選

〈第一席〉佐賀平野の秋天に浮く熱気球ミサイル放つ異国を憂ふ 宇美 井上照男

 【評】ウクライナやガザ地区などの戦闘は続き、日本でも異国からのミサイルに恐怖を覚える日々。のどかな上句と重苦しい下句との対比がリアルに迫る。

〈第二席〉何百の薄羽黄蜻蛉くれなゐの空へ銀河をつくりゆくな 大野城 染川ゆり

〈第三席〉こんなにもまあるく笑う人だっけ退職初日の夫と歩きて 福岡南 福井幸子 

★「大谷も三振するよ」妻は言う短歌大会三振われに 宗像 新倉正成

★ユーミンの楽譜や本など持ち帰る来月決まった実家の解体 行橋 木村葉子

★オムツいやパンツがいいと窓際に仁王立ちする二歳児の自我 糸島 森脇由利子

★焼け跡を歩きて売りし高瀬飴母の戦後史飽きず聞きをり 福岡城 藤本きひろ 

★「私の看護観」なる文集に三十年前のわたしの気負ひ 糸島 瀬戸口真澄


◎短歌 伊藤一彦選

★はつ夏の光纏ひて潮満つる海に来てますあなたの忌日 福岡東 堺 多鶴

★青空にぷかりと雲の平和なり傍若無人の顔はなし 福岡城 秋好智恵子 


◎川柳 森中惠美子選

〈第一席〉手を洗う子は祈ってるように見え 八女 吉原鐵志

〈第二席〉誤診した医者と一緒にのんでいる 小郡 加賀田干拓

〈第三席〉希望という言葉が好きになる老後 福岡早 出雲一夫

★どの花も天に向って咲く元気 柳川 横山 保 

★八月の水を欲しがる佛たち 久留米 江上春子


◎詩 平田俊子選

〈第一席〉「自己紹介」杵築 亀井満里


わたくし 脳梗塞になりまして

そして 右片麻痺の人となりまして

あげく 何もできない人となりまして

やっと左手に杖を持ち

Katann kotonnと何とかkanntoka歩けるようになったとき

やぁ ! 元気 ?

向こうから声をかけてきたのは詩でした

まぁ何とか・・・

すると 詩がいいます

人間生きていればnanntokanaruものさ

それで私も詩というものを書いてみようと

まづは自己紹介と 私脳梗塞となりまして

右片麻痺となりまして

何もできない人となりまして それでも わたくしはわたくしでして

わたくしをやめることはできない 私の自己紹介でした

が、これって詩ですか ?

Nanntokanaruものさ