12/16西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★冬ざれや鉄路名残りの駅標碑 諫早 田中道信

★燦燦とし方たたへ冬満月 佐世保 川原田安子

★木枯や老いに鞭打つごとくなり 平戸 古川敏郎

★冬ざれの峡に秘湯の窓明り 佐世保 相川正敏

★自主練の児の足音や冬木立 平戸 田地 花

★うたせ湯の音響き散り冬紅葉 諫早 安浪加余子

★句会終へなほ盛り上がるおでん酒 佐世保 馬場定水

★背にカイロ手に一杖の野の小径 大村 串崎洋一

★透明の傘に転がる初時雨 佐世保 太田恵子

★東天の寒月淡く雲幽か 佐世保 松永愛子

★一年を泣いて笑つた報恩講 大村 野田昌治

★週一の祖母に会ふ日の石蕗の花 大村 兵庫省三郎

★美少女のマスクの中の秘密かな 島原 坂本優美子

★悴むや支点力点作用点 佐世保 森 誠

★落葉掃く寄せてはかなき今日ひと日 諫早 森 裕子 

★降り立てば冬霧流る雲仙路 南島原 末吉貴浩


◎歌壇 黒田邦子選

★生きざまを問はれ続けし老いの身は身辺整理おこたらず生く 平戸 古川敏郎

★やっとやっと辿りついたよ百二歳ゆっくりゆっくり掃除、洗濯 大村 辻 フミヨ  

★妻の留守続きて指のあかぎれの痛む度に思ふ家事の厳しさ 佐世保 鶴田竹一

★年末の仕事のひとつ煤払いしたる夜の居間われに明るし 佐世保 小山雅義

★月曜日ハガキ四枚投かんす短歌に俳句、諧句にクイズ 壱岐 深見秀子

★新米の封切る香りかぎながら義兄の太き手の指思う 対馬 神宮斉之

★春の服購うをやめ支援箱にそっと入れおり心ばかりを 松浦 金子寿美

★日なたぼこでうたたねすれば亡き祖母によく似ていると娘が笑う 西海 田中加代子


◎諧句 松下冨士子選

★幸せの隣に不幸飼い馴らす 対馬 神宮斉之

★物価高おせちの具材考える 西海 田中加代子

★寄り添って長寿の道を二人連れ 壱岐 砥綿 満

★おしゃれしてデイケアに行く老いの幸 平戸 田口美穂

★ボランティア精神生かす老い二人 平戸 古川敏郎

★数珠の輪でつなぐ亡夫と夫婦の日 佐々 林 エイ子

★生き上手笑い袋を持ち歩き 佐々 法本安子

近所から回覧板の笑顔来る 南島原 末吉貴浩

★迷わずに飛べと見送る渡り鳥 松浦 皆川源太郎

★霜降りて美味しさの増す冬野菜 島原 山口光子

★年賀書く今年最後の大仕事 長崎 小浜 隆

★ミニ旅行外海路吠える波しぶき 長崎 溝口健治

★未知の地に指躍らせる旅行地図 長崎 荒井孝憲

★今日もまた希望の朝に戦の字 佐世保 平松公子

★熱燗に酔えるも戦無い日本 佐世保 小山雅義

★散る枯葉一葉一葉に物語 佐世保 鶴田竹一