12/10長崎新聞「郷土文芸」俳壇・歌壇・柳壇。
★身に入むや魚雷特攻ありし街 島原 荒木アヤ子
(評)第2次世界大戦末期、帰還を許されぬ特攻魚雷が特攻機と共に出撃した。その街に涙する句。
★一病をなだめて老いの冬籠 西海 原田 覺(さとる)
(評より)一病を抱えながら必死に冬をしのぐ作者。
★遊印の篆字刻むや日向ぼこ 長崎 辻 耕平
(評より)詩画に押す句語の刻印。それも篆字とは。詩や書画をたしなむ文人の優雅な日向ぼこ。
★上寿の母喜寿の娘諭す菊日和 長崎 吉田志津子
※「上寿」=百歳を祝う言葉。
★外つ国の戦場に照る冬の月 佐世保 小山雅義
★十二月八日鳴くのを止めた鳩時計 長崎 宮崎包子
★時雨るるや納屋に主なき車椅子 西海 楠本良子
★退潮や海鼠突く棹ままならず 平戸 本川 誠
★薪を割る一打のこだま冬来たる 西海 植村京子
★削岩機の響く山峡冬日和 長崎 島崎日曻
★身に入むや今聞きし事すぐ忘れ 大村 平松文明
★縄暖簾潜りてまづは海鼠噛む 佐世保 相川正敏
★師の句碑を拝し小春の句会かな 島原 佐藤美保子
★冬天へ舌先曝す鬼瓦 長崎 森 昇
★寄る波に逆ひもせず浮寝鳥 西海 田川育枝
★人道回廊御為ごかしや神無月 佐世保 森 誠
※表面は相手のためにするように見せかけて、その実は自分の利益をはかること。
★淳任天皇御陵の森や百千鳥 島原 柴田ちぐさ
★切株に腰置き秋の中にゐる 島原 福本かつ子
★秋夕焼影絵のごとく牛並ぶ 雲仙 西田豊子
★妻の背のまるくなりけり小六月 長崎 林田 実
★間引かれて列整ひし大根畝 諫早 野崎治行
★読みし本脇に積まれし炬燵かな 長崎 成瀬至楽
★新幹線抱きこむやうに山眠る 諫早 中島こゆき
★母の手をきつくにぎりて七五三 諫早 石川総一郎
【選者吟】異国語の飛び交ふグラバー園小春
◎歌壇 馬場昭徳選
★逝きし母存命ならばと齢数ふ父戦死時は二十七歲 佐々 敦賀節子
(評より)母の年齢に父の死の重ね方が巧み。
★三世代同居の愚痴を友に聞く娶らぬ吾が家の愚痴もきかする
★天高し悟空が乗っていそうなる雲ひとつ浮く友に会いたし 川棚 斉藤敬子
★半世紀過ぎて最初のクラス会戻らぬものを拾い集めて 長崎志方雅一
★二十六の影を引きずり来し道を我もなぞりて西坂に着く 長崎 林 志郎
★パレスチナ自治区ガザ地区シファ病院人が又死ぬ人がまだ死ぬ 長崎 中小路和久
★青春がはるかに遠のくそう想い八十路の友の文を読みたり 佐世保 谷頭正仁
★二度三度フクロウ啼きて秋の夜はいよよ静まるひとりの茶の間 佐世保 友廣ヒデヨ
★住みなれて住み易き町寺通りなじみの梵鐘定時に響く 長崎 松本テツ子
★辛き日を支へくれゐし友よりの新米届く二度にわたりて 諫早 田中りつ子
★雨上がりの滴ひとつぶ首筋に「あっ」と気付いたマスク忘れた 長崎 石井玉江
【選者詠】まるで壊れたオルガンのやうなわれである朝からずつと疲れやすくて
◎柳壇 瀬戸波紋選 題「雑誌」
★雑誌の見出しどんな病も治りそう 長崎 上野幹夫
★物知りの元は雑誌の拾い読み 雲仙 山口顕治
【選者吟】鍋敷きにちょいと拝借古雑誌
◎ジュニア俳壇 江良修選
★音楽の秋に深まる皆の声 佐世保・鹿町中3 松本明人
★半そでがいなくなっていく商店街 鹿町中2 岡本光輝
★ひらひらと紅葉かつ散る烏帽子岳 鹿町中1 八色希望
★秋の空リレーでつかむ表彰状 鹿町中1 樫山優叶
★教室にバッタカマキリキリギリス 鹿町中1 平山 昊音
★秋の朝肺いっぱいにキンモクセイ 佐世保・東明中2 福田菜穂
★縁側のすすきが指揮者虫の声 東明中1 松永優里
【選者吟】平和かなイルミネーションの歳末
◎ジュニア歌壇 杉山幸子選
★(秀逸)伴奏が鳴り終わっても頭にはかすかに残るみなの歌声 佐世保・東明中3 前田凛桜
★朝七時挨拶交わす生徒たちこれから始まる駅伝練習 佐世保・崎辺中3 井手日菜多
★夕日の日砂浜を駆ける中高生裸足で走る姿青春 崎辺中2 小川湊士
★盆休み母がコロナになりどこも行けずに育児ヤングケアラー 崎辺中1 岸川市椛
★秋の空黒く染まるの早くなりこのぐらいまで練習してた 東明中3 塩 日菜乃
★指揮台に立つと鼓動が速くなる曲のリズムに合わせるように 東明中3 前田一輝
★秋の田は稲がかられて丸坊主のこった跡はバリカンみたい 東明中3 山田日陽
★制服の第一ボタンあける人生活部員が注意する朝 東明中3 古川いちか
★放課後に夕日が照らす体育館秋の山へと歌う「ふるさと」東明中3 高橋ゆず
◎その他(あとで読みやすいように活字に致します)