12/10NHK俳句。題「薬喰」、選者は山田佳乃さん、ゲストは岩下尚史(作家・國學院大學客員教授)さん。       

  (注)「薬喰」とは、言うまでもなく薬を飲むことではなく、体力をつけるために、寒中に滋養になる肉類を食べること。昔の日本人は肉を食べることを嫌ったので、薬と称して鹿や猪などを食べたのである。(銀座あたりの料亭などでは、意外と40年ぐらい前まで日常語として使われていたそうです)。

岩下尚史(ひさふみ)さん】

196

1年、

熊本県

菊池市生まれ。現在、

東京

青梅市在住。

國學院大學を卒業して新橋演舞場(株)式入社、企画室長として新橋花街主催「東をどり」の制作に携わった。幕末から平成にいたる東都の花柳界を調査研究して社史『新橋と演舞場の七十年』を編纂した。退職後の2007年、『芸者論:神々に扮することを忘れた日本人』で第20回和辻哲郎文化賞を受賞した。

◎「名句de穴埋めクイズ」

◎◎◎◎に行つて戻つて薬喰 星野高士

   ※今回の解答案に出て来た言葉「病院」「ふるさと」「診察」などなど。原句は↓

裏山に行つて戻つて薬喰 星野高士

◎入選9句

★山の子の仕掛けたる罠薬喰 青森県弘前市 木田多聞天
★胎の子の今日はよく蹴る薬喰 埼玉県さいたま市 花見鳥
★沢水を引きし厨や薬喰 富山県氷見市 正水多嘉子               
★美しく肉たたまれて薬喰 愛知県名古屋市 日永田陽光

★杣人に秘伝ありけり薬喰 香川県高松市 真鍋孝子

★丹田に熱ひろがりぬ薬喰 オーストラリア クイーンズランド州 紗羅ささら

★(一席)胃の中の猪呑みたがる薬喰 福岡県春日市 田尻武雄

★(二席)仕留めたる漢を上座薬喰 福岡市 坂本祥子

★(三席)もうゐない月の兎や薬喰 愛知県岡崎市 德 照代

   入選句及び佳作は「NHK俳句テキスト」2月号に掲載されます。現在募集中の山田佳乃さんへの投稿↓

◎「ゼロから俳句」文語(書き言葉)と口語(話し言葉)、歴史的仮名遣いと現代仮名遣い

①髪洗までの優柔不断かな 宇多喜代子

    →文語、現代仮名遣い

②ウミユリの化石洗ひぬ山清水 辻ら颯太郎

    →文語、歴史的仮名遣い

春は曙そろそろ帰てくれないか 櫂 未知子

    →口語、歴史的仮名遣い

④ピーマン切て明るくしてあげた 池田澄子

    →口語、現代仮名遣い

岩下尚史さんの俳句

★春待つや小町の果ての薬喰 岩下尚史

   ※芭蕉の歌仙の一句に「浮世の果は皆小町なり」がある。ここで言う「小町」は小野小町のこと。そのことを踏まえ、岩下さんは「春待つや小町の果ての薬喰」と詠んだ。岩下さんの言う「小町」は勿論小野小町のことでもあるが、「小町の果ての薬喰」と言う時の「小町の果」は《(岩下さんが見てきた)銀座などで、還暦を過ぎてますます美しくなる芸妓衆》のことのよう。それはやはり「薬喰」などの精進のお陰だと言うのである。ところで、「春待つ」も「薬喰」も季語。

   ↓(山田佳乃さんの添削)

★恋古りて小町の果ての薬喰

◎再放送は、15日(金)午後2:35〜3:00。