◎俳句ポスト、兼題「新酒」の回、中級者以上結果発表、水曜日。【佳作】より。

今年酒権禰宜のよう喋ること 雨野理多

武蔵野の空の明るさ新酒酌む 石塚彩楓

新酒揚ぐ六百人の社殿前 播磨陽子

金継ぎを金の走れる新酒かな さとけん

付喪神新酒一献きこしめせ にゃん

賜りし田に一礼し今年酒 伊予素数

新酒汲むまづ一杯を船霊へ 可笑式

神さびの三輪の磐座新酒酌む 山内彩月

山祇を祀る火猛し新酒酌む 久森ぎんう

新走り井戸神様へまず供へ 渡海灯子


ひさかたの新酒は月の香を孕む 倉木はじめ

蔵の窓運河に開く新走り 中根由起子

新走り腹に初々しき炎 仁和田 永

栄転の夜風のまろし新酒酌む あいだほ

六等星ほどのあざやかなる新酒 古瀬まさあき

山の神川の神へと今年酒 でんでん琴女

金箔のしづかに沈みゆく新酒 織部なつめ

水筒の新酒よ峰の慰霊塔 無弦奏

一升瓶新酒の重み得たりけり 彼方ひらく

新酒くる滴りさうな稲穂の絵 北藤詩旦


新酒酌む店の壁には雪の富士 亀田荒太

昼の酒ましては越後の新走り 菫久

まづ裏の井の神様に注ぐ新酒 足立智美

新酒飲る軍艦島に昇る月 鈍亀

ほろ酔ひて巡る新酒の諏訪五蔵 小川 都

あまやかに灼かれる咽喉や新ばしり ノセミコ

鬼貫の街に月ある新酒かな 中岡秀次

伏見より新酒届きぬ昭和基地 幸田梓弓

ぴんと立つあわじ結びや今年酒 深山むらさき

蔵人といふ名の蕎麦屋新酒酌む 姫川ひすい


新酒利く四方峰々見晴るか 山香ばし

芳しき御神木なり新酒くむ 卯年のふみ

みづにみづの田には田の神新酒汲む 明後日めぐみ

新酒出てさても明るき話題かな 酒井春棋

寛解の新酒呑みたし雲流る 小川野雪兎

羽後は佳き湧水の國今年酒 釜眞手打ち蕎麦

刃に新酒吸はせ花板ここ一番 トポル

杉樽に波紋の美しき新酒かな オキザリス

ビーカーに新酒なみなみ准教授 大黒とむとむ

森ひとつしぼつたやうな新酒の香 平良嘉列乙

鑿研ぐや新酒と五人目の弟子来 さく砂月

竈にも流しにも神新酒酌む 川越羽流