11/19NHK短歌。選者は吉川宏志さん、ゲストは翻訳家のピーター・マクミランさん、司会は尾崎世界観さん。
【ピーターマクミランさん】アイルランドの日本文学者、翻訳家。杏林大学客員教授。東京大学非常勤講師。日本在住歴20年以上にわたる。『英詩訳・百人一首―香り立つやまとごころ』で、2008年度日本翻訳文化特別賞、日米友好基金日本文学翻訳賞受賞。プリンストン大学、コロンビア大学、オックスフォード大学の客員研究員。2008年、"One Hundred Poets, One Poem Each"(英訳・小倉百人一首)をコロンビア大学出版会より出版。同書は、2008年度ドナルド・キーン日本文化センター日本文学翻訳特別賞、国内では2008年度日本翻訳家協会第44回日本翻訳文化特別賞を受賞。
◎吉川宏志さんの時のテーマは「実感的、表現力アップ」、今回は「切る」。「動詞の工夫が大事」。例歌↓
★夏の暮れガスの青火のかたわらに豆腐を切りて豆腐を殖やす 吉川宏志
◎入選歌
★帝切(ていせつ)の創口(そうこう)に汗疹できぬよう優しく洗う夏が過ぎゆく 北海道札幌市 絹 真結子
↑ 特選二席。
★ステッチを終えた静かな母の手がほつりと切った鳶色の糸 埼玉県戸田市 水沢わさび
★木箱には箸箱、眼鏡、千人針 二十歳で伯父の時は途切れて 神奈川県横浜市 鈴木綾子
★ざんばらで初めて手刀切る二十歳土俵の土を顔に残して 神奈川県横浜市 渡部晃大
★切り花を買い求めてく人たちのそれぞれが待つ盆の迎え火 静岡県静岡市 春ひより
★ニワトリも風切羽を持っていて手紙を開ける頻度で羽ばたく 静岡県沼津市 楢原もか
★御社とか慣れないことを書いた手で証明写真を真四角に切る 愛知県東海市 中山あゆみ
↑ 特選三席。
★もう切れぬところまで切る足の爪手で確かめてトウシューズ履く 兵庫県姫路市 玉響雷子
↑ 特選一席。
★チョコを切り刻んで鍋に重ねたら底がじわりと消える日曜 福岡県福岡市 金城ひろ子
入選歌及び佳作は「NHK短歌テキスト」1月号に掲載されます。次回、吉川宏志さんへの投稿↓
◎入選にあと一歩
★切ることでようやっと生きてきた子の腕の横線白く浮きたつ 千葉県千葉市 永岡桐子
※第2句から第3句までの句跨り。この辺を整えてリズムよく仕上げたい。↓添削
★切ることでようやっと子は生きてきた腕の横線白く浮きたつ
◎表現の最前線
★晚夏光おとろへしタ酢は立てり一本の曇の中にて 葛原妙子
【葛原妙子さん】東京市出身。東京府立第一高等女学校(現・東京都立白鷗高等学校)卒業。父は外科医、母は俳人。夫の葛原輝は外科医。長女は児童文学者の猪熊葉子。1939年(昭和14年)潮音社友となり、太田水穂、四賀光子に師事。1948年(昭和23年)、女人短歌会創立、会員となる。1956年(昭和31年)、現代歌人協会の発起人に加わる。1964年(昭和39年)、日本歌人クラブ賞受賞。南日本新聞歌壇選者就任、1971年(昭和46年)、迢空賞受賞上梓(制作時期でいえば第四歌集にあたる)。1981年(昭和56年)、季刊短歌誌「をがたま」創刊、編集発行者となる(1983年終刊)。1985年(昭和60年)、多発性脳梗塞と肺炎の併発により田園調布中央病院で死去。歌集『橙黄』『飛行』『薔薇窓』『原牛』『葡萄木立』『朱霊』『鷹の井戸』など多数。超現実主義短歌を推進し、戦後の歌壇に大きな影響を与えた歌人の一人。その歌風から、「現代の魔女」「球体の幻視者」、「幻視の女王」などと言われた。
◎ピーター・マクミランさんの表現の最前線。百人一首かるた「百人イングリッシュ」↓
↓(引き継ぐのは岐阜県立飛騨神岡高等学校)