6/4朝日俳壇・歌壇。
☆桜貝くれて夫となりし人 (高知市)和田和子
↑長谷川櫂共選。
★火の島へ向かフェリーや夏立ちぬ (春日市)宮原孝一
★ふたりして持て余したる日永かな (藤岡市)飯塚柚花
◎小林貴子選
(評)子どもが走ると背負っているリュックが左右に揺れ続ける。可愛らしい光景。
★錆びてゐる思ひを磨くごと若葉 (廿日市市)伊藤ぽとむ
★はにかみてカーネーションを突き出しぬ (会津若松市)湯田一秋
★中学生ほどに竹の子育ちをり (横浜市)鈴木昭恵
★蚊喰鳥さっと闇割く音のする (横浜市)田中靖三
★花林檎真つ只中を五能線 (下関市)野崎 薫
◎長谷川櫂選
★耕人にひるのいこいが「昼ですよ」(西海市)前田一草
★初夏の海や特攻二千余機 (横浜市)正谷民夫
★金色に風暮れてゆく茅花かな (静岡市)松村史基
★衣更へ初めての如銀座行く (東京都)三浦民男
◎大串章選
(評)「青春の寮歌」というと第三高等学校寮歌 「紅もゆる岡の花」や第五高等学校寮歌「武夫原頭に草萌えて」を思う。
★異次元の対策遅々と子供の日 (佐賀県基山町)古庄たみ子
(評)岸田首相の「異次元の少子化対策」が議論を呼んでいる。
★ウクライナの子等へ祈りの鯉のぼり (川口市)青柳 悠
★米寿まであと一年の新茶かな (川崎市)小池たまき
★新緑の湖畔の白きカフェテラス (多摩市)岩見陸二
★古刹より見下ろすダム湖若葉風 (高槻市)日下遊々子
★手作業の茶摘み見ながら試飲かな (玉野市)加門美昭
★木の芽雨廃線沿ひの過疎の村 (日立市)奥井能哉
★「剣呑」という字に思うウクライナまたやって来る二年目の夏 (寝屋川市)今西富幸
※「剣呑」=危険が迫っていること、不安に感じていることなどを指す熟語。なんとなく嫌な予感、危険が迫っていると感じられる場合に用いる言葉で、すでに危険が発生している状態、明らかに命が危うい状況では、剣呑という言葉を使用することはできません。(刀剣の専門サイト「刀剣ワールド」より)
★戦中の産めよ殖やせよ思ひ出づ少子化対策と呼称変はれど (志摩市)田畑実彦
★波平とノリスケとマスオ結婚をするなら誰って話す銭湯 (富山市)松田わこ
★さえずりは眠気覚まさず誘うのみうぐいす鳴き交う午後のキャンパス (名古屋市)百々奈美
★年長けて眼鏡総入れ歯補聴器の補助器具に助けられつつ生きる (いわき市)守岡和之
★連休の老いはさびしも園芸店に買うあてのなき花を見にゆく (下野市)若島安子
☆えほんではかわいかったと本物のヒキガエル見てべそかく娘 (川崎市)小暮里紗
※佐佐木幸綱共選。
◎永田和宏選
(評)実際に問うてみると失敗作ではないと。いつも優等生の回答でまあ驚きはない。
☆目をおめめと言われおめめをしかと開け目薬さしてもらう (和泉市)長尾幹也
※佐佐木幸綱共選。
★ただ一度生まれ来たりし悲しみを詠みし男もベラフォンテも (観音寺市)篠原俊則
★ベラフォンテのさくらさくらを詠いたる歌残されてベラフォンテ逝く (水戸市)中原千絵子
※「べラフォンテ」=ハリー・ベラフォンテ。アメリカの黒人歌手で1960年に来日し初日公演のアンコールに「さくらさくら弥生の空は〜」で始まる日本の唄歌「さくらさくら」をたどたどしい日本語で唄った。今年4/25に96歳で死去した。「バナナボート」は有名。島田修二(1928~2004。東大→読売新聞記者→コスモス創刊)に〈ただ一度生まれ来しなり「さくらさくら」歌ふベラフォンテも我も悲しき〉という歌がある。
★あした海へこうひとりでゆこう複雑な涙がこぼれる前に (山陽小野田市)磯谷祐三
★よさそうな赤ちょうちんを見つけるとおまえが死んだこと思いだす (東京都)浅倉 修
☆姉ったら恋の話もオープンでとうとう父は出か けていった (富山市)松田わこ
※馬場あき子共選。
◎馬場あき子選
★高々と赤子持ちあげ初めての桜のなかを泳がせてやる (東京都)渋谷敬子
★将来の夢問う声に口つぐみ18歳の秘めたる決意 (名古屋市)百々奈美
★昼休みマックの卓に突っ伏して新入社員か疲れきってる (千葉市)駒井ゆきこ
★デイサービスの小暗き隅に職員はわが車椅子拭いてくれおり (和泉市)長尾幹也
★学校で育ちし二匹アサギマダラ声援送られ高く翔び発つ (沼津市)松下初恵
★鹿児島の芋焼酎のやさしさよ口に含めば湾の長閑さ (岐阜市)後藤 進
◎佐佐木幸綱選
★鹿島神宮の御田植祭に奉納する早乙女舞の素顔のひかる (鹿嶋市)大熊佳世子
★寛大で寄附もたっぷりする友が山菜採る場所ヒ・ミ・ツと言えり (水戸市)中原千絵子
★青春の「朝日ジャーナル」捨てました明日から老人ホームに暮らす (海南市)樋口 勉