夏井いつきさんが第三句集を出されたようです。夏井いつきさんの俳句をまとまった形で読む機会は本でも買わない限りなかなかないので、ネットなどから出来るだけ情報を集めてみました。

目次は、こんな感じ↓ですが、各章にはそれぞれ章題になった俳句が添えられているようです。

以下、書き出してみました。

・(鶴の章) 鶴食うてよりことのはのおぼつかな

・(お降りの章) お降りや壺に緋いろの鳥しづか〉

・(暖かの章) 暖かをまるめたやうな小石かな

・(陽炎の章) 心臓部らし陽炎のあのあたり

・(時鳥の章) 水に根のひろがる夜の時鳥

・(百合の章) 一本の百合のごとくに戦はぬ

・(月の章) 二つ目の月産み落としさうな月

・(黄落の章)百年を旅して黄落の一本

 (余録「青き踏め」)

・(あとがき) 鶴を抱くやうな余生をたのしまん


 一句目はわかるような気がします。ニ句目の、壺にはどんな「緋いろの鳥」が描かれているのでしょうか。「しづか」とはどんな雰囲気?

 総じて、比喩が多いようです。「暖かをまるめたやうな小石」、「一本の百合のごとくに」。「戦はぬ」とは?不戦の尊い姿の比喩か。「二つ目の月産み落としさうな月」「鶴を抱くやうな余生」などなど。


 そして内容は? 総じて、読者が想像力をフルに稼働させて読む俳句のようです。作者の表現したかったイメージを読者もそれにより近いイメージを抱けるようであればその句は成功していると言えるわけですが、またその時こそ作者冥利に尽きるというもので、それがまた俳句というものの醍醐味でもあるわけですが。そういう意味では俳句は表現の文芸であり、そういう要素が句の中にもなければならない。読者が好きなように解釈して下さい、ではその作品の主体性、いや作者自身の主体性が失われてしまうのではなかろうか。


 (株)夏井&カンパニーさんの紹介によると、本句集は、夏井いつきさんの50代の作品に、コロナ禍に詠んだ26句を加えた515句が収録されているそうです。


 「コロナ禍に詠んだ26句」などは大いに興味のあるところですが、例えば

「炎天にマスクの上の目が細る」

「冷房ぬるし銃めく新型体温計」

「プラスチックの微笑 客室乗務員(シーエー)のマスク」


などがそうですかね?「あとがき」によるとこのページにある「青き踏め 二十六句」は全てこの時期の作品だそうです。


「目高数ふ朝の動体視力かな」

「円は永遠めだかの群は鉢に添ひ」


 他の書店さんのサイトに別のページの写真がありました。

「もの食はねば冬の躰のきれいになる」

「荒星のみな鳴りさうな夜の耳」

「鯨の目鈍くひらきぬ水族館」

「毛皮着て夜の水族館の底」

「アルファベットのKが一番寒いと思ふ」

「北風きり揉みきりきり切つ先が発火」


 今のところ、これぐらいの情報しかありません。今後、どなたかが書評を書くようなことがあればまた読んでみたいと思います。ファンの中には「あぁ、自分はこういう句が作りたいのだ」という方もいらっしゃるようですが、正直、少なくとも、私が目指す俳句ではないようです。