1/9NHK短歌。テーマは「肴」。選者は田村元さん、ゲストは平野ノラさん(お笑いタレント)。レギュラー出演、カン・ハンナ、司会は星野真里。

お笑いタレント。1978年東京都生まれ。父はかつて不動産会社に勤めていて、仕事と遊びを思い切りやり土地を転がすバブリーな生活をしており、これが後に平野の「バブルネタ」を主にした芸風に影響がある。小学生の頃はバレーボールの東京都葛飾区のチーム『東金町ビーバーズ』に選手として所属し、中学校では強豪校・葛飾区立金町中学校へ進み、高校は推薦で修徳高校に進学。中・高9年間キャプテンを務めた(関東大会で2位になった他、全国大会と東京新聞杯で優勝を経験)。「今芸人としてやっていく上で大切な精神力が、厳しい練習環境で揉まれていくうちに培われた」と言う。高校卒業後はミュージカル女優を目指しダンスの学校に。また友人が主宰する劇団の公演に出演。この時に「集団でやるのは私には向いてない。自分は笑いを求めているし、笑いを取るのが一番嬉しい。」と感じてお笑いを始めた。最初は相方を探したが見つからず一人でやって行くことを決めたが、なかなか芽が出ず、一時はOLをしたりしていたが、再度芸人の道を目指し、2010年12月にデビュー。芸名の「ノラ」は「野良猫のように一人でも芸能界を渡って行けるように」という意味で名付けた。2021年3月、第1子女児を出産。「子ども(バブ子ちゃんと呼ぶそうです)が私の鼻の穴に手を入れてお乳を吸う。子どもが壁にくっついて何かをいつまでも話したりする。毎日がとっても楽しい。」(今日のNHK短歌での話)。

◎冒頭の短歌

★はんぺんがちくわの方へ流れ寄りわれは酔ひへと傾いてゆく 田村元

◎入選歌

★失恋の夜の酒にはスルメだとわれに教へしその道の友 東京都葛飾区 福島隆史

 ↑平野ノラさんの特選。田村元さんの特選一席

★先程の虹を肴にひとり飲む盃の縁を光らせながら 東京都北区 土居文恵

★さんま刺し、素揚げ銀杏、衣かつぎ、茄子揚げ浸し、秋のスタメン 東京都江東区 筆禍

★今宵また肴となって出席のアイツは今年七回忌かな 神奈川県川崎市 和泉明宏

 ↑特選三席

★黒板に知らぬ肴がふたつあり旅の途中の街の飲み屋に 岐阜県瑞穂市 渡部芳郎

★マヨネーズに醤油垂らしてひとふりの七味スルメの反り返るころ 大阪府池田市 黒木淳子

★少しだけ仕事がうまくいった夜は驕らぬようにピリ辛メンマ 大阪府寝屋川市 今西富幸

 ↑星野真里さん特選。

★真夜中の打ち明け話枝豆のひとつひとつを指に押し出し 奈良県大和郡山市 大津瑞貴

 ↑特選二席

★チータラをチーズと鱈に分けていくママとわたしを分けたい夜に 和歌山県和歌山市 千代田 環

 ↑カン・ハンナさんの特選。


入選歌と佳作は「NHK短歌テキスト」3月号に掲載されます。


次回、田村元さんへの投稿↓

◎「熱血!短歌ノック」

★バーナーに炙られているエイヒレが己の舞を見せつけてくる 星野真里

 ↑添削なし。

★潮風をおつまみにして缶ビール飲み干して待つ冬の夕焼 カン・ハンナ

 ↑添削なし。


次に、平野ノラさんが出した題で短歌を作る。題は「子」。平野さんの話「子ども(バブ子ちゃんと呼ぶそうです)が私の鼻の穴に手を入れてお乳を吸う。子どもが壁にくっついて何かをいつまでも話したりしている。毎日がとっても楽しい。」

★ママみたくふつうにテレビにでるのでもいいと言う子と分けるざる蕎麦 星野真里

 ↑添削なし。

★前を見て走り続けた昨日ありバブ子の寝息明日を支える カン・ハンナ

 ↑平野ノラさんになったつもりで詠んだ歌のようです。平野さんのことをよく知っている詠み方で好感を持てます。田村元さんの添削は↓

前を見て走り続けた昨日あり明日はバブ子の寝息がひらく

 ↑「(明日はバブ子の)寝息がひらく」は分かりにくいですね。「明日はバブ子の寝息が開いてくれる」という意味だと思いますけど、添削して分かりにくくなるのはイカンでしょう、笑。


平野ノラさんはこのカン・ハンナさんの歌を特選にしました。


◎「選者の話」

 ↑鎌倉にある居酒屋「いさむ」だそうです。大正十三年に創業された歴史あるお店のようです。『勇亭』というのは当時の店名のようです。

★勇亭に酎(ちう)を嘗めつつ相撲テレビ覗く如きはわれの歓楽 吉野秀雄

※吉野秀雄=1902年(明治35年)~1967年(昭和42年)。歌人、書家、号は艸心。多病に苦しみながら独自の詠風で境涯の歌を詠んだ。群馬県生まれ。慶應義塾大学に進むが、肺結核を患い中退、以後生涯、種々の疾病との闘いが始まる。1925年8月に鎌倉・七里ケ浜の鈴木療養所(現・鈴木病院)に通うため、鎌倉市長谷「光則寺」の借家に居住。1926年結婚。第一歌集『天井凝視』。1929年夏に男子が生まれるも死去、この年より旅に出て、茨城県の長塚節の生家や新潟県出雲崎における「良寛百年際式典」に列席したりした。1936年、第二歌集『苔径集』刊行。この年から毎月「鎌倉短歌会」を開催する。1944年、妻はつ子死去。1946年から鎌倉アカデミアで教え、廃校まで勤めた。1947年再婚。戦後はわずかな新聞の原稿料・選歌・講義で辛うじて生活を維持。雑誌『創元』の創刊号に「短歌百余章」を発表、次いで『鹿鳴集歌解』『寒蝉集』『早梅集』を刊行して歌壇に地位を確立した。1952年、朝日新聞社「日本古典全書」で『良寛歌集』を校註。1957年、『良寛和尚の人と歌』を刊行。1958年『吉野秀雄歌集』刊行。1966年、随筆集『やわらかな心』刊行。1967年、第1回迢空賞受賞。没後に芸術選奨受賞。墓は鎌倉瑞泉寺にあり、歌碑「死をいとひ生をもおそれ人間のゆれ定まらぬこころ知るのみ」「手の平に豆腐をのせていそいそといつもの角を曲がりて帰る」がある。出身地である高崎市では毎年、吉野秀雄顕彰短歌大会が実施されている。

◎「あなたならどうする」では「いさむ」の名物メニュー「エレベーター」を詠んだ田村元さんの短歌。

↑油揚げと大根おろしの組み合わせ。揚げたりおろしたり→エレベーターらしい。

★居酒屋の隅で頬張るあげおろし○○○○○○○△△△△△△△

★居酒屋の隅で頬張るあげおろし今は君よりビールがほしい カン・ハンナ

★居酒屋の隅で頬張るあげおろししもしもバブ子持って帰るね 平野ノラ

★居酒屋の隅で頬張るあげおろしこぼしなさんなと亡き母の声 星野真里

居酒屋の隅で頬張るあげおろしアゲアゲだつたころを思つて 田村 元

再放送は、1月11日(火)午後3:00〜3:25。