5/29ラジオ「文芸選評」(短歌) テーマは「映画」選者は伊波真人さん。
【伊波真人(いなみまさと)さん】1984年群馬県高崎市生まれ。歌人・作詞家・小説家・映像作家。美術系大学の映像学科→早稲田大学第二文学部卒業。早稲田大学在学中に彬聖子の漫画『こいのうた』で穂村弘の短歌を読んで興味を持ち「早稲田短歌会」入会。歌人集団「かばん」。2013年『冬の星図』で第59回角川短歌賞受賞。著作『ナイトフライト』『エンドロール』(共著)『青春迷宮』(共著)など。
◎番組中に紹介された伊波真人さんの短歌。
▪️夜の底映したような静けさをたたえて冬のプールは眠る
▪️画用紙に表と裏があるように心にもあるざらついた面
▪️あなたとの残りの時間を測るようオリオンは砂をこぼしつづける
◎入選歌(石井かおるさん選含む)
▪️休日は終日シネマをはしごして私のなかに満たす私を(福井県 西宮子さん)
↑伊波真人さんイチオシ作品でした。
▪️誰の事も誘わず映画館へ行く大人になれた気がしたあの夏(埼玉県 小俣友里さん)
▪️映画ではエレベーターがよく止まる三分経てば恋も始まる(鹿児島県 松下弘子さん 63)
▪️前の人のポップコーンを食べる音続けて食べる後ろの人も(宮崎県 能勢絢子さん 25)
▪️映画とはすなわちひかり スクリーンいっぱいにただ心がひかる(鹿児島県 ほのふわりさん 17)
▪️お父さんアニメで泣くのと驚いた『火垂るの墓』を共に見た夏(広島県 堀眞希さん)
▪️宇宙人は令和になっても来ないから答え合わせができないでいる(埼玉県 高橋泰源さん)
▪️闇のなかエンドロールに向かひをり離れゆく船を見送るやうに(千葉県 佐藤夏生さん)
▪️客席に丸い柱の映画館三本立ては柱にもたれて(愛媛県 中矢尚さん 54)
▪️右太衛門嵐寛千恵蔵立ち回る場面はいつも雨降りのなか(東京都 大村森美さん 86)
▪️真夜中にボリューム落として観た映画小さな画面のひまわり畑(福島県 可笑式さん 55)
▪️撮影後、告知、宣伝、公開日、進みゆく日々、夢の幕開け(東京都 はやさん)
▪️八ミリに写したものは忘れたが写したことは手で覚えてる(宮城県 蠟燭集合さん)
▪️映画ならエンドロールの後に来る日々の暮らしを回すためらい(山形県 西鎮さん)
▪️原作と映画は少し違ってて桜のシーンをいまだに思う(岩手県 鶴田真由さん 36)
▪️客の居ぬシネマの椅子に座りたり音無き世界しばし楽しむ(鹿児島県 大隅太郎さん 60)
▪️右側に真面目に前を向く君の鼻筋がありしばし見つめる(三重県 伊藤すみこさん 26)
▪️いつも行く映画館にてわが席は最後列の一番左(島根県 熱田一俊さん 34)
◎次回6月5日は俳句、兼題は「氷菓」。選者は榮猿丸 さん。