記録が大変遅くなりました🙇。
5/16NHK短歌。選者は大森静佳さん、ゲストは俳優・須藤蓮さん、司会は有森也実さん。題は「不思議な歌」。
▪️三日月は夜空の笑顔匂い立つ真夏の芝生君のくちびる 須藤
◎冒頭の選者・大森静佳さんの短歌
▪️夜が夜らしく流れるバスの窓僕は記憶のうちがわにいた 大森静佳
ふ〜ん、今回の題「不思議な歌」らしく不思議な歌ですね。作者は女性なのに「僕」が出ている…。
◎入選9首
▪️標識にじゃんけんパーとグーのある七号線に春、海はすぐ 山形県酒田市 五十嵐眞佐子
この奇抜なイラ ストは、ドライバーの眠気防止のためだそうです。
▪️風下に立ちて桜は五分咲と言ひあてる汝(な)は白杖の人 東京都世田谷区 大武美和子
この歌は、選者・大森静佳さんの特選ニ席でした。
▪️夕焼けの紫色の音がした世界がもっと静かな時代 東京都西東京市 和田直樹
▪️人間に嘴(はし)生(あ)れたると思ふらむ二年越しなるマスクに鳥は 神奈川県横浜市 阿部 泉
この歌は、特選三席。
▪️ウユニ湖の水面に僕の「僕」を見る僕より空を飼い慣らしてる 岐阜県岐阜市 あさき まほろ
「ウユニ湖」の歌が特選一席でした。
▪️追伸で海に誘うと決めていて追伸だけでは出せない手紙 三重県松阪市 こやま はつみ
▪️ピタリ止む水の不思議を眺めをり歯科診療用イスの俎 兵庫県加古川市 野口雅也
▪️展示室8で来世の君を待とう滅びた「ヒト」の剥製として 奈良県広陵町 武村みこ
▪️ばあちゃんはさまよっている挨拶が「便出ましたか」の不思議な国を 広島県広島市 堀 眞希
入選歌と佳作は、「NHK短歌」7月号に掲載されます。
◎次回の大森静佳さんへの投稿
◎「今読みたい愛の歌」
▪️このひとのこの世の時間の中にゐて額(ぬか)に額あてこの人に入る 河野裕子
今となってはその時(番組の時)に大森さんがどのような話をされたか覚えていません。この歌は河野裕子さんの第13歌集『母系』(2008年)の中の一首です。
帯の「あとがき」のところを拡大しました↓
歌集『母系』には以下のような歌が収録されています。
▪️助けてと手握る力も失せ果ててそれでも死ぬには死ぬ力要る
▪️このひとにこれから何度あへるのか山羊の眼のやうに色あはき眼(まみ)
▪️良かつたのか悪かつたのかそれはそれ締切りにつんのめつて生きて来たのだ
▪️里子さんあなたを亡くして三十年紅(こう)のやさしさがあなたに似てくる
▪️青空のふかい所に窓ひとつ光りて見えゐし十月終る
▪️ふるさとは墓が古びてゆく所縁(へつり)に赤い椿が咲きて
▪️どの部屋も風の道あるこの家に黄のチューリップ二本さしおく
▪️うつ向いてものを書くときこのひとは何とわたしから遠いのだらう
▪️さびしさを透かせて咲けるコスモスに十月終りの陽が廻り込む
▪️泣いて泣いてすつからかんになりし子に四歳半の元気が戻る
▪️気まぐれに乗せてみる雪溶けてゆく雪の時間がてのひらにあり
▪️遺すのは子らと歌のみ蜩のこゑひとすぢに夕日に鳴けり
▪️生き物はみんなひとりで死んでゆく死んでゆくにも体力が要る
◎「大森先生のポイントで改作!----今回のテーマ イメージで遊ぼう!」
〈歯が抜けた跡のイメージを詠む〉
○ゲストの須藤蓮さん→「若き日が」
▪️小臼歯失ったあとの口腔を舌でたどれば若き日があり
○司会は有森也実さん→「※」
▪️小臼歯失ったあとの口腔を舌でたどれば※あり
○元歌は↓
▪️小臼歯失ったあとの口腔を舌でたどれば鍾乳洞あり
まとめ↓
【大森静佳】1989年生まれ。32歳。岡山県出身、京都市在住。京都大学文学部卒。「塔」編集委員。笹井宏之賞選考委員。角川短歌賞(2010年)、現代歌人集会賞(2013年)、日本歌人クラブ新人賞(2014年)、現代歌人協会賞(2014年)、日本一行詩大賞(2019年)など受賞。歌集『てのひらを燃やす』『新版 歌集 てのひらを燃やす』『カミーユ』。評論『この世の息 歌人・河野裕子論』。