次回(2/18)のラジオ「俳句で語〜」の題は「利休忌」。


【利休忌】千利休の忌日。天正19年2月28日(1591年4月21日)。70歳。


千利休は「わび茶」の完成者として知られ、「茶聖」と称せられている。今井宗久、津田宗及とともに茶湯の天下三宗匠と称せられ、「利休七哲」に代表される数多くの弟子を抱えた。子孫は茶道の三千家として続いている。


豊臣秀吉の側近でもあったが、のちにその関係に不和が生じ最後は秀吉に切腹へと追いやられた。


利休の名は、禁中茶会にあたり、町人の身分では参内できないために正親町天皇から与えられた号である。その時その名の考案にあたったのが大林宗套、笑嶺宗訢、古渓宗陳など。いずれも名刹大徳寺やの南宗寺の住持でもあり名僧。故に現在、3月27日および3月28日に大徳寺で利休忌が行われている。「利休」の意味はいろいろ諸説があって定まっていないと思われます(※)。


※「利休」の由来の各説

▪️「名利、既に休す」

▪️「利心、休せよ」(才能におぼれずに「老古錐(使い古して先の丸くなった錐)」の境地を目指せ)

▪️『茶経』の作者とされる陸羽(りくう)にちなんだもの。

しかし「利休」の名は晩年での名乗りで、茶人としての人生のほとんどは宗易を名乗った。利休がその号を賜ったのは利休64歳の時。


いずれにしても、利休を知らなければ「利休忌」の俳句が作れるわけがない。いやはや難しい題を出されたものです。しかし難しいと言って回避するわけにはいかない。それが俳人というもの。茶の心には及ぶべくもないがやはり利休のことを出来るだけ勉強して作る以外にないでしょうね。さてさて出来ますかどうか。


また、忌日が2/28と言ってもそれは旧暦。新暦では4/21頃、もう春たけなわの頃です。忌日俳句は難しい。


歳時記では、例えばインターネット歳時記kigosaiでは


「利休忌(仲春。宗易忌/利久忌) 陰暦二月二十八日。千利休の忌日。利休は堺の商家の生まれ。信長、秀吉に仕えた。禁中茶会にて正親町天皇に茶を献じたこともある。晩年には茶道の基となる「わび茶」を完成させた。秀吉に 理不尽なる切腹を賜った。」


とあり、他のところも似たりよったりです。特異なところでは、「新版茶道大辞典(淡交社)」の3月の歳時記に


「〈利休忌〉は、千利休の遺徳を偲んで営まれる法要と茶会をいう。茶家最大の行事として、三千家をはじめ一般の茶席などでも行われる。現在では忌日の2月28日より1ヵ月繰り下げ、表千家では3月27日に、裏千家では3月28日に行われている。」


ぐらいでしょうか。


俳句歳時記などを書くぐらいの方々の俳句を探してみました。


▪️利休忌の石の膚(はだ)えの冷たさよ 石橋秀野

▪️草屋根に日のおごるあり利休の忌 石橋秀野

▪️利休忌や雨だれさざれ石を生み 鷹羽狩行

▪️利休忌や縁(へり)うつくしき京畳 鷹羽狩行

▪️利休忌の春喚ぶ雨となりにけり 楠本憲吉

▪️利休忌の男点前の杓光り 皆吉爽雨

▪️山椿さはに見たりき利休の忌 森澄雄

▪️引く波の渚なだめて利休の忌 片山由美子 

▪️敷藁にひと雨の艶利休の忌 片山由美子 


大体において取り合わせの句ですね。利休のことをよくご存知の方々の利休のイメージと眼前の景色を詠みつつ利休を偲ぶ俳句と言っていいのではないでしょうか。いずれにしても読者はこれらの俳句から利休を少し思い出す、ということになりますね。


▪️肖像画口ゆるく締め利休の忌 川崎展宏


↑これなんかは利休の肖像画↓を見ての作のようです。

▪️葉のよぢれそのまま活けむ利休の忌 朝倉和江

▪️折目とは心にありて利休の忌 稲畑汀子   

▪️利休忌や生涯一日一日あり 稲畑汀子   


↑1句目は、長崎の華道家であった朝倉和江(故人)さんの句です。自らの華道のあり方を述べつつ茶道家の利休を偲ぶ句。「葉のよぢれそのまま活けむ」、利休の「自然(じねん)」を尊ぶ精神と通ずるものがあります。

2句目、3句目は俳人の稲畑汀子さんの句。自分の普段の心がけと利休忌の取り合わせの句。


▪️利休忌の白紙にちかき置手紙 上田日差子  


↑これなんか、利休が朝顔の一花だけ残して秀吉に見せた「淡性の侘び」を思い起こさせます。派手好きの秀吉にはこの侘びがわからなかった。

 

とまあ、こんな風にして、利休を勉強し自分なりの利休像を掴み自らの感性と生き方を詠む、ということになるのではないでしょうかね。私はまだ一句も出来ていません。


他、利休をよく理解しての作と思われる例句

     

▪️掛花の一輪の香や利休の忌 卜部黎子         

▪️利休忌や切つ先白き竹の筒 関根洋子         

▪️淀川の悠然として利休の忌 片岡久美子   

▪️利休忌の雨に色濃き落椿 三輪温子         

▪️利休忌や傷あればこそ味ありし 江島照美   

▪️一本の茶杓に所思や利休の忌 阿波野青畝 

 ▪️普段着の心大切利休の忌 阿波野青畝

▪️利休忌の読経しづかに朝の雪 及川貞 

▪️つくばひに餘寒の木影宗易忌 及川貞 

▪️利休忌や前衛諸道蔓延りて 相生垣瓜人 

▪️利休の忌遣す茶筅の銘「涙」平畑静塔