『俳句年鑑』を読む(31) 辻桃子さん。
「年代別 70代女性 団塊の世代の下で」(筆者 : 井上康明さん)より。
辻桃子 (昭和20年2月4日生/童子) ▪️臥待月(ふせまち)の娘の琴は立てしまま
▪️秋風やみづほ書斎にされかうべ
▪️一日あひニたたびあはず冬の虹
▪️大空に飛白(かすり)なしたる小鳥かな
臥待月の句には「如月真菜の琴」、秋風の句には「九月十一日新潟大学医学部脳外科教授室」の前書き。脳外科医だった俳人中田みづほの書斎。〈冬の虹〉の句、高浜虚子 の小説「虹」、虚子の〈虹たちて忽ち君の在る如し〉を思わせ味わい深い。〈大空に〉の作、秋の季節感を大きく把握。虚子ゆかりの物語に立脚し季節に遥けさがある。(井上康明さん)
◎「諸家自選五句」では、
▪️初鳥や大津の宮はこのあたり
▪️点々と爺の頭や出湯の春
▪️突風やいつせいに花たちさわぎ
▪️夜濯の絞り切れざるものひとつ
▪️納経にはなびら散つて鹿の声
◎「童子」
主宰:辻桃子 副主宰:安部元気・如月真菜 編集長:佐藤明彦。東京都国立市。月刊。650部発行。9600円。昭和62年9月創刊。「俳句って、たのしい」がモットー。作句信条は、 微底写生で写生を超える。平成30年で創刊31周年。
▪️一月や凍てたる城の長廊下 辻 桃子
▪️黄緑をこぼしたやうや蕗の薹 阿部元気
▪️静かなり涅槃のころの鹿なれば 如月真菜
▪️露けしや楽の音合はすざわめきも 佐藤明彦
▪️寒紅や老いても無頼通しをり 篠原喜々
▪️魚目氏と二人残され冬座敷 田代早苗
▪️これも縁雛見てゆけ汁粉食へ 小川春休