「母港」100号を読む(5)「書家近詠」より。

▪️弘法の「零番札所」返り花 岸原清行(青嶺)

▪️初富士や未だ遙かなる我が晩年有馬朗人(天為)

※有馬朗人さんは、1930年生まれ。今89歳。

▪️兜太より生きむ二月の養生訓 阿部正調(蕗の里)

※阿部正調さんは、1942年生まれ。77歳。大分県。金子兜太さんは、2018年2/20ご逝去、98歳でありました。

▪️歳月のひかりを梁にとろろ飯 奥名春江(春野)

▪️敷藁を突き抜けて草芽吹くなり 今瀬剛一(対岸)

▪️凍つる夜も噴きに噴きゐる桜島 吉岡乱水(太白)

▪️鏡餅下宿に母の来たらしき 野中 亮介(花鶏)

▪️花梨の実かたくなままで意を通す 深野敦子(杏長崎)

▪️飯食ふを仕事となせり冬日和 淵脇護(河鹿)

▪️白鳥の白つらぬきしひとつの死 石寒太(炎環)

▪️猟犬の老いて寝ごとを言ひにけり 太田土男(草笛)

▪️横たへて金剛杖や冬はこべ 鈴木しげを(鶴)

※「はこべ」=はこべら。春の七草のひとつ。

▪️隠し味ある人とゐる年忘 能村研三(沖)

▪️立冬の陽や潮の香や和布刈句碑 寺井谷子(自鳴鐘)

※北九州の門司にある和布刈(めかり)神社の高浜虚子の句碑でしょうか。「夏潮の今退く平家亡ぶ時も 虚子」。

▪️早春や竹林に日の滑り込む 杉本艸舟(ぶどうの木)

▪️混濁の世に粛然と独楽澄めり 大串章(百鳥)


※《「母港」100号を読む》を終わります。