『榾』12月号を読む(4)

◎6ページに伊東静雄さんの詩「なれとわれ」が載せてありました。


伊東静雄さん(1906〜1953)は、長崎県諫早市出身の詩人。現在の長崎県立大村高校から、現在の佐賀大学を経て京都帝大(文学部国文科)に学んだ人。卒業後は学校の教師をしながら詩作活動を続けた。京大の文学部教授であった朝永三十郎(ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎の父親)や文芸評論家の福田清人は旧制大村中学の先輩、同学年に早稲田大学文学部教授国文学者の川副国基、國學院大學文学部教授の蒲池歓一がいる。教え子には小説家の庄野潤三や下村脩がいる。少年期の三島由紀夫にも多大な影響を与えた。三好達治、中原中也、立原道造、蓮田善明は仲間である。忌日は「菜の花忌」と呼ばれ、諫早市では現代詩を賞する伊東静雄賞が設けられている。

 新妻にして見すべかりし

 わがふるさとに

 汝(なれ)を伴ひけふ來れば

 十歳を經たり


 いまははや 汝(な)が傍らの

 童(わらべ)さび愛(かな)しきものに

 わが指さしていふ

 なつかしき山と河の名


 走り出る吾子に後れて

 夏草の道往く なれとわれ

 歳月は過ぎてののちに

 ただ老の思に似たり


結婚後10年(昭和17年)、大阪から始めて妻子を伴い帰省した時の作品だそうです。「なつかしき山」は、私の故郷でもある多良岳、「河」は本明川ですね。


◎最終ページ

・福岡杉11月句会

・会員消息(お便りコーナー)に、


《湊淑子さん/今日は時雨模様の暗い空でしたが、午後は少し明るんで来て時折雪がキラキラしています。(以下省略)11/19》


とあり、このお便りを見て、湊さんが北国の人なんだと初めて知りました。そして少し調べましたらすごい人なんだとわかりました。


・「榾亭雑記(編集後記)」「破蓮」「枯蓮」についての山崎あきらさん(「榾亭」)の小論。

(骨子)全てが滅びの季節に入り、落葉樹は黄葉・散り紅葉は過ぎて「枯木」になる。 しかし「枯木」は決して枯死した樹木のことではない。枯れたように見える「冬木」を意味する。草々の中で初冬の荒涼たる景の代表が「枯蓮」、つぎが「枯蘆・枯葎」それに「枯芝・枯菊」。蓮の黒ずんで二つ折れになった姿は、心誘われるものである。


▪️ 枯蓮の動く時きてみな動く 西東三鬼

▪️枯蓮に隈落おとしたる道化たち 橋閒石

▪️蓮枯るるにつけても齢いとほしめ 安住淳

▪️われを指すものほうほう蓮枯れて 手塚美佐

▪️枯蓮や号外浮きて曇りけり 永井龍男

▪️蓮の骨ほきほき水に溺れけり 松村蒼石

▪️破蓮のこれ以上なき破れやう 川岡末好


びっくりしました❗何と、そうそうたる俳人の例句の中に私の句が❗だったのでこの句は山崎あきらさんの特選を得たものであると私も解した次第です。しかしやはり恐縮至極ですね😂。


※「枯蓮」や「蓮の骨」は冬の季語ですが、「破蓮・敗荷」は、秋が深まり、青々と茂っていた葉が破れた蓮で、秋の季語です。


以上で『榾』12月号を読む、を終わります。