『母港』最新号第96号を読む(2)


○今号の巻頭に「招待特別作品」と銘打って、「航」主宰の榎本好宏氏の俳句が10句、掲載されていました。今号が「16周年記念号」だからでしょうかね。

榎本氏は、『俳句界』7月号「森澄雄 大特集」の時に、「澄雄俳句の特徴」というところに稿を寄せておられましたね。当ブログでも取り上げました↓。

https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12508241301.html

◾一人また婿の加はり夕端居

◾独りゐることよ扇を閉づる音も

◾歌のやにこよなく晴れし長崎忌


榎本好宏氏=1937年4月5日東京生まれ。國學院大學卒。1970年、「杉」創刊に参画。森澄雄に40年師事し、編集長を18年担当。森澄雄死後「杉」を退会。選者を務めた俳誌『會津』終刊後、2014年、俳誌「」を創刊、主宰。2010年、句集『祭詩』で第49回俳人協会賞受賞。2015年、『懐かしき子供の遊び歳時記』で第29回俳人協会評論賞受賞。句集や評論などたくさん本を書いておられますね。

独活食うて世に百尋も後れけり(句集『祭詩(さいし)』より。以下同じ)

◾幹濡らし竹を撓めて虎が雨

◾氷旗太宰入水の日なりけり

◾瓦みな南風(やうづ)光りや日本海

◾志功描く釈迦の弟子みな素足にて

◾山菜のくさぐさ姉のやうな人


○西山主宰句は以下の如し。

◾老鶯や火をこぼさざる登り窯

◾緑蔭や指立て測る似顔絵師

◾何も通さぬ面構へ蟇

◾一滴もラムネこぼさず爆心地

◾爆心地鉦も鳴らさず氷菓売

◾氷菓売る影も黙祷爆心地

◾永らへて吊皮掴む原爆忌


※いつも表紙裏に鷹羽狩行さんの句が載るのですが、今回はありませんでした。


『母港』最新号第96号を読む(3)に続きます。