秋簾(仲秋を主に三秋。9月を主に8〜10月。副題=簾の名残、簾外す、簾納む、簾の別れ)
・秋になっても残暑が続くので強い日差しを避けるためにまだかけている簾。
・なかば巻き上げられていたり、色褪せて垂れ下がっている様子など、いかにも秋の風情を感じさせる。
・行く夏をを惜しみ懐かしむ心、
しまい忘れられて風に揺れている簾の侘しさ。
【すえよし】
◾色褪せて軒に馴染みし秋簾
◾三味の音や秋の簾にほのあかり
◾大方は外さず杣の秋簾
◾しまいには上に菜を置く秋簾
◾行き先は竈と決まり秋簾
◾働いて来し貫禄の秋簾
◾巻き上げて山懐かしむ秋簾
◾秋簾むかし郭(くるわ)の佇まひ
そ
◾巻きもせで簾そのまま秋に入る
◾中は飲み屋防空壕の秋簾
◾隠居部屋もとは馬小屋秋簾
◾秋簾昼の温みを残し夕
〈例句〉
★三味洩れる置屋の軒(のき)の秋簾 中川濱子
★巻きの端に残るさみどり秋すだれ 鷹羽狩行
★夜々の灯を重ねていつか秋簾 桂信子
★色褪せし一人住まひの秋簾 伊藤 和子
★退屈でひらく聖書や秋簾 池田澄子
◾秋簾軒つらねたる蜑の家 山本誠子
◾秋すだれ嬰児の白き足裏見ゆ 荒井千佐代
◾秋すだれ夜は波音のみ容れて 荒井千佐代
◾風吹けばハタリハタリと秋簾 野村鞆枝