♻️8/3 第66回長崎原爆忌平和祈念俳句大会 入賞作品

《募集句・一般の部》

【大会大賞】向日葵未だ直立不動の兄 大分 有村王志

✳️「向日葵《の》」の「の」は「や」の間違いではないかと思い、当日参加された方に資料を確認していただきましたら「の」で間違いないそうです。


【県知事賞】石鹸を花と泡立て敗戦日 長崎 出田量子


【県議会議長賞】紙魚だらけ付箋だらけの原爆史 大分 田口辰郎


【県教育長賞】飲みたいとき飲める水あり長崎忌 福岡 太田一明


【長崎新聞社賞】八月を背負いきれない被爆の木 大分 田口辰郎


【現代俳句協会長賞】てのひらの豆腐が揺れる原爆忌 長崎 中尾よしこ


【新俳句人連盟会賞】長崎や聴こへぬ鐘の鳴り続け 宮城 福田良光


【西九州現代俳句協会賞】神すらも被爆するなり浦上忌 福岡 山本則夫


【九州俳句作家協会賞】つり革に垂れ下がる手や長崎忌 福岡 古賀音彦


【口語俳句振興会賞】無番地の父母に漂う白蝶よ 長崎 寺井すみえ


✳【長崎平和推進協会賞】爆心碑より折り返す蟻の列 佐世保 牛飼瑞栄


【優良賞】八月九日吊革を握りしめている 長崎 中尾よしこ


《募集句・ジュニアの部》

【大会大賞】被爆者の祖父は話をしてくれず 長崎南山高三年 森田悠揮


【長崎市長賞】終戦忌祖母の静脈瘤うねる 愛媛県立松山東高1年 野村隆志


【長崎市議会議長賞】部活後に水道ひねりあふれる平和 精道三川台高2年 山口幹生


【長崎市教育長賞】水筒の一滴惜しむ原爆忌 精道三川台高1年 櫻井琢仁


【長崎新聞社賞】夏蝶の片翅残る爆心地 愛媛県立松山東高1年 山根大知


【長崎県文芸協会長賞】八月を閉じ込め教科書の重く 愛媛県立松山東高2年 小野芽生


【長崎の証言の会賞】黙祷の球児日焼けのうなじかな 大分県立日出総合高1年 下司青葉


【長崎如己の会賞】黒板に非核化と書く長崎忌 大分県立日出総合高1年 下司青葉


【長崎県被爆者手帳友の会賞】黒髪の祖母のアルバム長崎忌 愛媛県立松山東高2年 山内那南


【長崎キワニスクラブ賞】背もたれと距離を置きつつ原爆忌 佐世保市立祇園中3年 石川胡桃


【優良賞】

◾医学書を十字に束ね原爆忌 愛媛県立松山東高3年 武田歩

◾危機感の欠けている螺子敗戦日 愛媛県立松山東高2年 吉田真文


◎各選者の特選句(一般の部のみです

《当日句の部》

【大賞】灼けている治人の句碑に触れてきた 長崎 長島富美枝


【準大賞】黙々と髭剃る父の敗戦忌 長崎 宮崎包子


【優良賞】

◾飛ぶことを蝉に託して蝉の殻 長崎 西史紀

◾くずされてもまた積む八月のつみ木 長崎 相川文子

◾九条と水持ち歩く長崎忌 福岡 東妙寺らん


【実行委員会賞】

◾八月や水を一杯くれないか 長崎 松尾和子

◾八月の隙を窺っている戦争 長崎 横山哲夫

◾八月の大地を叩く象の鼻 長崎 富岡三枝子

◾おーいと手をあげて夫くる魂迎 長崎 藤野律子


【佳作賞】

◾杖ついて地球は廻る原爆忌 長崎 中村昭夫

◾オペ室で人体となる原爆忌 長崎 倉田明彦

◾原爆は語りたくない語らねば 長崎 犬童ともよ

◾逢へずとも母に添い居り缶ビール 長崎 中村慎治

◾楽しさの大まる小まる水馬 長崎 米光徳子

◾敗戦忌のっぺらぼうの御真影 長崎 馬津川ゆり

◾母子像を鞭打つやうに炎暑かな 佐世保 牛飼瑞栄

◾原爆忌平和と卒寿に感謝です 長崎 嘉松愛子

◾ほむら立つ兜太の魂や長崎忌 長崎 三宅三智夫

◾被爆者の胸に大輪ひまわりの花 長崎 植木千幸

◾被爆碑の指で辿る名鳴けぬ蝉 時津 藤澤美智子

◾句読点なき文に似て昼寝覚 長崎 出田量子


🔹資料として、昨年の分を次ページに(URL)記しました。


✳️「架け橋」主宰・二ノ宮一雄氏句集『終の家』。(株)文學の森より発売中。2667円(税別)。昭和13年八王子市生まれ。

◾木の葉髪書に埋もれたる終の家

◾数へ日や万巻の書の深き黙

◾ふるさとは霧の底なる小盆地

◾さすりつつはは冬月へ送りたり

◾うさぎ小屋どの子も覗き卒業す

平成三十年四月五日、私は満八十歳となりました。本書の内容は、そこまでの十年間の、丸々七十代の私自身の生活体験に他なりません。しかし、前述したように単に吐露するのではなく、その体験の中から、七十代という人生の晩年を迎えた人間の、自然や人間に対する普遍的な姿を描き出したいという思いで、この一書を編みました。(「あとがき」より)


句集の特徴の一つは光のポエジーである。…詩人・歌人は、写生を突き詰めると最後は光りに出会う。…物をよく見て写生するということは、光の働きをよく感じるということである。作者はよく光の動き・働きを見ている。…。

一雄はうさぎと子供に共感する。子供、妻、両親、人、動植物、森羅万象への思いやりとやさしさが句集に満ちている。若き頃、檀一雄や眞鍋呉夫と共に小説を書いていた作者の私小説風の俳句は、身の回りのささやかな命と平和を愛する心にあふれる。(跋文 坂口昌弘氏)