芒(仲秋を主に三秋。9月を主に8〜10月。植物季題。副題=花芒、芒原、尾花、穂芒、薄、糸芒、鬼芒、十寸穂の芒ますほのすすき、一叢薄、一本薄、真赭ますほの糸、むら薄、鷹の羽薄・矢筈芒ヤハズススキ、はた薄、薄の糸、薄野、乱れ草、袖波草、露曾草、頻浪草、縞薄)
・イネ科ススキ属。日本の在来種として全国的に山地から平地までの乾燥した日当たりの良い場所に生える。
・草丈は、2メートル程になり、8〜10月頃に開花する。花穂の長さは15~40センチぐらい。
・昔から人の暮らしとも関わりが深く、葉や茎は、屋根を葺くのによく使われ、その為「カヤ」とも言った。細長い葉は刃物のように鋭くうっかり触れると指を切ることがある。「カヤ」は萱、屋根を葺くのに用いられる草の総称。他に菅、茅(ちがや)などある。
・月見において、団子や里芋とともに薄が供えられる。鋭い葉を持つので、魔除けの意味があるらしい。月見に用いた薄を軒に吊るすと、向こう一年間、病気をしないとの言い伝えもある。
・秋の七草のひとつでもある。
・風に一斉になびくさまは美しい。見所に、箱根の仙石原などがある。銀色の穂がいっせいになびく様は壮観。
✳️尾花←花穂が開くと真っ白な獣の尾を思わせるような形となるので「尾花」と言う。
✳️「鷹の羽芒・矢筈芒(ヤハズススキ)」=別名「虎文芒」とも言い、緑色の葉には淡黄色の矢がすり状の斑がある。
✳️「十寸穂の芒・真赭の薄」←穂が10寸(30㎝)。「真赭」=ますほ・まそほ・まそお・ますお。赤い土の色。「真朱」とも書く。「真赭の糸」という表現で赤みを帯びたすすきの穂の色を表したりする。
【すえよし】
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◾宅配や罪なきほどの芒傷
◾真赭の薄地は違えてもうから住む
◾芒野や開拓村の藁家跡
◾(8/9NHK堀本裕樹2句投句)
〈例句〉
◾古郷や近よる人を切る芒 一茶
◾猪追ふや芒を走る夜の声 一茶
◾君が手もまじるなるべし花芒 去来
◾貌が棲む芒の中の捨て鏡 中村苑子
◾土橋の下にもまねく芒かな 桜井梅室
◾山づとの薄や月もついて来し 寥松
◾芒はら果はしほやくにほひかな 夏目成美
◾日も月も見えて芒のあら野哉 完来
◾東西をわすれはてけり薄原 壺中
◾海山の風にかれ立つ尾花かな 卓池
◾穂芒や舟に灯ともす墨田川 白兎
穂
◾織女に老の花ある尾花かな 嵐蘭
◾古郷をまねくか尾花二子山 上島鬼貫
◾日を受けてうす紫の尾花かな 原月舟
◾秋の日やうすくれなゐのむら尾花 松岡青蘿
◾曙の尾花むらさきふくみけり 臼田亞浪
◾甲斐駒に雪おく朝の尾花刈 石橋辰之助
◾逆穂波うつて一乗谷尾花 石原八束
◾頬にふれ那須の尾花のやはらかし 欣一
◾おほらかに裾曳く富士や花芒 高橋淡路女
◾売れ残る八百屋の芒後の月 高橋淡路女
◾みちのくの風の冷めたき芒かな 高橋淡路女 梶の葉
◾供えたる芒を月ははなれたり 米沢吾亦紅
◾折りとりてはらりとおもき芒かな 飯田蛇笏
◾壷にさしてすぐに風そふ芒かな 木下夕爾
◾多からず少なからざる庭芒 服部点深
◾手に探るおのが山河の芒かな 村越化石
◾さびしさうだから芒を三つ編みに 櫂未知子
◾夕焼のしばしとどまる芒原 内山芳子
◾日の匂ひして生けらるるすすきかな 高田正子
◾健やかな五体を没し芒折る 阿部みどり女
◾着弾のあと茫々と芒かな 羽田岳水
◾裾原に芒の光る神の山 長山野菊
◾猪をになひ行く野や花薄 加舎白雄
◾穂芒が戦ぎ勿来の関近く 西村和子