✏今度、NHK俳句の選者になられる【長嶋有(ながしま ゆう)】さん。あんまり私は知りませんでしたので、調べてみました。

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〇Wikipediaには、《1972年9月30日埼玉県草加市生まれ。小中高は北海道。小説家、漫画家、同人作家である。最終学歴=東洋大学第2部文学部国文科。公開句会「東京マッハ」のメンバー。俳句同人「傍点」主催。2014年には初の句集『春のお辞儀』を刊行。》などとありました。

小説が主な活動みたいですね。たくさんの賞も受賞されているようです。

『サイドカーに犬』で、第92回文學界新人賞を受賞(2001年)。また翌年には、『猛スピードで母は』で第126回芥川賞受賞。さらに2007年には、『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞受賞。2016年には、『三の隣は五号室』で第52回谷崎潤一郎賞受賞、などなど。

漫画にも詳しく、「ブルボン小林」名義で、批評活動等もされているようです。

俳句は、ネットで知り合った仲間と俳句の会に参加するようになった、とのこと。その仲間の中に、やはり今度選者になられる川上弘美さんがいらっしゃった、とのこと。

〇『句集 春のお辞儀』 (ふらんす堂 2014/04/20 124ページ)

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1995年~2014年にかけ、同人誌、私家版のミニ句集、文芸誌、俳句誌などの雑誌、またテレビ番組や公開句会の場で発表してきた中から279句を精選し収録された、とのこと。

私はその句集を持っていませんので、ネットなどの書き込みから出来る限り拾ってみました。結構集まりましたよ。

帯には次の6句。

★短日のピアノを噛んでいた子供
★見られれば歌うのやめる寒の明け
★はるのやみ「むかしこのへんは海でした」
★放火魔は少年でした初桜
★春昼の知らないうちに切った指
★すわる鳥なくて寂しい彼岸かな

へ~こういう風な俳句を詠まれる人なんだ~というのが第一印象。6句目の「すわる鳥なくて~」てのは私はよくわかりませんが、他の句について言えば、日常の何気ないところを切り取ったり、気づいたこと、聞いたことなどをそのまま書いたり、という風ですね。特に特別のことを言いたい、という風ではない。

でもたぶん「ああ、あるある、そういうことって。確かに確かに」というような印象を与える句のようで、結構若い人たちには新鮮な印象を与え、意外と受け入れられるのではないかな、と思われました。

集めてきた句を数えてみましたら、50句ありました。50句は全収録数の約⅙。いろいろな人が好きな句として挙げたものですから、大体これらを見れば、長嶋さんの俳句はこういう俳句なんだとわかるのではないかと思います。詠まれた時期はさっぱりわかりませんので、少し私なりに組み換えて並べてみます。季節ごと、とか。

★ビデオデッキの真実の口春浅し
★控えめな春のお辞儀を拝見す
★車はカー馬鹿は馬鹿なり恋は春
★無人なら覗く詰所や桜餅
★昼の忍者桜をみたら眠くなる
★くすぐるのなしね寝るから春の花


★薫風や助手席にいてチューバッカ
★初夏や少女パスタを平らげる
★裁判長寝てしまうほど五月かな
★図書館に本多すぎてさみだるる
★六月や美容師みんな痩せている
★白玉や子供は空を飛べません

★向日葵やパンがないのでケーキ喰う
★水筒の麦茶を家で飲んでおり
★サンダルで走るの大変夏の星
★夏シャツや大きな本は置いて読む
★夏雲や後部座席にいて気楽
★恋は油断夜歩くのも夏のせい
★夕飯はバームクーヘン夏休み

★アロハ着て嫌がる犬は置いてゆく
★朝ハンバーグ昼ハンバーグ昼花火
★夏服で楽譜めくってあげる役
★人間大砲に笑顔で入り夏
★目指せばもう始まっている花火かな
★アイスキャンデー当たりが出ればもう晩夏

★顕微鏡の中は明るし半夏生
★県境に立ちたがる人夏帽子
★手押しポンプの影かっこいい夏休み
★夜のメトロノーム恐ろし九月尽


★銀紙の裏は白色秋惜しむ
★レシートの丸みに秋の日付かな
★林檎一つむいた側から食べてしまう
★人間と畳を飛んでカマドウマ
★鯖雲や犬の興味は他の犬
★としまえん秋という短きものよ


★年末や仲悪そうに佇んで
★ストーブは爆発しない大丈夫
★分度器もち測るものなし初時雨
★シャンプーの先になくなる師走かな
★恋人はばあさん言葉冬の海
★冬籠切手は左側に貼る
★タラップを引き返す者なくて冬


★ギターよりバンジョー軽し小正月


★ポメラニアンすごい不倫の話きく
★フェラーリの馬は案外落ち着いている
★指さして南の島ならどれでもよし
★ドーナツの食べ終えし手の甘さかな
★ピストルをむけたら猫が近づいた
★海にさかなガンジス川に女の子
★英会話ペラペラなので巴里へ行く


夏の句が結構多いですね。無季もあります。こういうのを自在と言うのでしょうか、見たこと、聞いたこと、気づいたこと、したこと、感じたこと…などをその時に、言葉にしておきたい(つまり俳句にしておきたい)、ということなんではないでしょうか。

読む側はその時の作者の心の中や仕草などを想像しながら読みます。そして、長嶋さんの俳句はそういう力を確かに持っているように思います。

リズムが抜群にいいです。

ま、とりあえず、こういう俳句もあるんだ、という風に理解しておきたいと思います。

以上、長嶋有さんについての私なりのご報告でした。また、井上弘美さんについても調べてみたいと思っています。