✏以前、「第6回星野立子賞(上広倫理財団主催)」を受賞された瀬戸内寂聴さんの初めての句集『『ひとり』(深夜叢書社。2017/5)を紹介しました。
https://blogs.yahoo.co.jp/ajlf4921/15411502.html

★御山(おんやま)のひとりに深き花の闇
★仮の世の修羅書きすすむ霜夜かな
★子を捨てしわれに母の日喪のごとく
★はるさめかなみだかあてなにじみをり
★生ぜしも死するもひとり柚子湯かな
★天地にいのちはひとつ灌仏会
★おもひ出せぬ夢もどかしく蕗の薹

〇FB友達の十河智さんという方が、この句集の読後感想文を彼女のブログに書いておられました(5/11)。

今日はその記事を基に少し寂聴さんの俳句を書き足しておきたいと思います。

★人に逢ひ人と別れて九十五歳(寂聴)

(十河智さんの感想文) 宗教心の薄い私には、寂聴さんの仏門に帰依した心境は、よくわからない。ただ、先に逝くひとを思い、懐かしむ心情に深く共感する。「ひとり」を意識しつつ、逝く人を思う気持ち、まだまだ若い私も、既に老境を感じて、心の準備を迫られる。

他に、

★柚子湯して逝きたるひとのみなやさし(寂聴)
★生ぜしも死するもひとり柚子湯かな(寂聴)

など。 長崎新聞でこの句集を紹介された時にも「亡くなった人を思い、自らの孤独を見つめる85句を収録」と書いてありましたね。
あとがきにも《90代となり体調が優れず、ふさぎがちな時期もあったが「小説を書く気力はなかったけど、ふと『俳句があった』と思い付いて作った本です。》」とありました。

〇十河さんは、「寂聴さんの生きて来た道程を映す句もところどころに」として、次のような句も紹介してくれていました。

★花おぼろ第二の性を遺し逝く 

「ボーボォワールを悼むこの句、この句集で、私にとっては、一番の句である。」(十河智さん)

★初恋も海ほほづきの音も幽か(寂聴)

「私にもそうだが、徳島生まれの寂聴さんにはほおづきといえば、海ほおづきだったと思う。」(十河智さん)

★ぼうたんのうたげはをんなばかりなり(寂聴)

「尼僧たちの集まりなのかもしれないが、もっと前の人生の一ページなのかも。人生を、男と交わりかつ戦っている、気づいてみれば、いつも女どうしが議論し慰めあい、集まっている。」(十河智さん)

★むかしむかしみそかごとありさくらもち(寂聴)

「寂聴さんの小説を読みたくなる。ご本人にほんとに思い出すみそかごとあり、なのかとも。」(十河智さん)

★たどりきて終の栖や嵯峨の春(寂聴)

「今の偽りなき寂聴さんの思いであろう。」(十河智さん)
 
「人に頂いた図書カードを使いたかった。京都丸善が再開してから、まだ行ったことがなかった。やっと行く。俳句の棚を何気なく覗いた。この句集が目に留まった。俳句とともに老いてゆくことが愉しいと思う寂聴さんに会うことができて嬉しかった。」(十河智さん)

以上、十河さんのブログを基に少し書き足せていただきました。
十河さんのブログは、
https://blogs.yahoo.co.jp/sogotomoko194612/56668482.html

〇その他の寂聴さんの収録句。

★小さき破戒ゆるされてゐる柚子湯かな
★寂庵の男雛は黒き袍を召し
★氷柱燦爛(さんらん)訪ふ人もなき草の庵
★二河白道(にがびやくどう)駈け抜け往けば彼岸なり
★秋時雨烏帽子に似たる墓幽か

★ひと言に傷つけられしからすうり
★雪清浄奥嵯峨の山眠りけり
★小春なり廓は黄泉の町にして
★雛の間に集ひし人のみな逝ける
★独りとはかくもすがしき雪こんこん

★骨片を盗みし夢やもがり笛

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