声かけられる率が凄いです。

当然僕ではないです。
暖さんを抱っこヒモで抱いていたりすると、とにかく声をかけられる。

「あらあ、何ヶ月ですか」

「5ヶ月です」

「ええ?大きいねえ」

という会話はもう鉄板の流れ。

暖さんは思わず声をかけたくなる、なんとも言えない赤ちゃん感がある、と知り合いが言ってくれました。
そうなのか?


先日も妻の実家までの電車の中では、先ず素敵なおばさまが話しかけて来てくれた。

小綺麗な感じのおばさま。

「あらあ、何ヶ月でらして?」
「5ヶ月なんです」
「わあ、大きいのね」

鉄板の例の所から始まります。

「ぱあ」

とおばさまがやってくださると、暖さんは笑います。
社交的かもしれません。
僕の「捻くれ内向」を受け継がなくて良かったと思います。ねじれ国会みたいですね。

暖さん無垢な笑顔をしてくれます。
僕は笑ってても、目が笑ってないよね、と言われることが多いので、暖さんはそうでなくて良かったです。目もキチンと笑ってます。

そんな無垢な笑顔がどうなのかそうなのか、とにかくおじさま、おばさまが話しかけて来ます。

その小綺麗なおばさまは
可愛いわね、本当に可愛いわね、となった後にふと、

「私もね、孫ができたりするとね、いつもテディーベアーをつくるの。足の裏にね、日付をいれてね。
いつもくまちゃんを作るから、くうちゃんママってね、呼ばれててね。」

「素敵ですねえ」

なんて、お話をする。




ほんのつかの間のおしゃべり。

「じゃあ、元気に頑張ってね」

とどこかの駅で降りていかれた。とても笑ってくれていた。なんだか嬉しかった。




僕たちも電車を乗り換えた。
ここからほぼ一本。
席が空いていたので座らせてもらった。


隣には年配のおじさまがいらっしゃった。
唐十郎さんみたいなおじさま。小綺麗というよりは、ラフな感じで帽子をチョンと頭に乗せている。
草臥れたツイードのジャケットではあるが、胸にはブローチを付けていらっしゃる。オシャレな方なのであろう。

小難しそうで頑固な雰囲気もあったので、暖さんの足がぶつかったりしないように気をつけていた。

ふと、こちらを見るなり、

ニコッと。

それまでの険しい表情が、一転。ニコオッと。

「可愛いねえ」
わあ、ありがとうございます。

「何ヶ月ですか?」
「5ヶ月なんです」
「大きいねえ」

鉄板のやつ。でもなんだか嬉しい。


「大きくて丈夫が一番。子供はね、元気が一番なんだよねえ、うん、可愛いねえ。

でも、お母さんは大変だ、体力いるでしょう。」



「そうなんです、筋肉痛です(笑)」



「そうかそうか、うちはねえ、双子だったんだよね。子供がね。」



「双子ですか!?うちは1人でもアレなのに、双子って大変ですよね?」


「そうそう。大変(笑)二段ベットにね、2人を寝かせてね。朝見てみたら下の段の子がいないの。ええっ!と思ったら、なぜかベットの下に潜ってたりね。もう色んなことがあったよね。
着るものもね、お揃いが良いってね。2人おんなじのを着せていたなあ」

なんだかとっても良い表情をされている。言葉で表現できないけどとっても曇りのない素敵な表情を。


「子供ってね、過保護過ぎてもダメなんだよ。ほっとき過ぎてもね、ダメだしね。よく観察してごらんなさい。よく見てあげてね、寒いとか、暑いのね、とかね。昔はよく言ったもんだよ、鼻水出てきたら布団一枚増やすのよ、とね。」

何か、上の方を、宙を見てお話をしてくれている。

楽しそうに話してくれていて、僕らもなんだか嬉しい。

暖さんはいつの間にか寝ちゃってる。


おじさまが

「あれ?今どこの駅でした?いけね、乗り過ごしちゃったなあ」

テヘってもんで、手のひらを首の後ろに当てて苦笑い。

「では、また。お元気でね」

次の駅で降りていかれた。


一期一会。フォレストガンプみたいだ。

少なくとも、暖さんという存在がその出会いを作ってくれた事は確か。

今はくうくうと寝ていますが、これはすごい事だ。


おじさまの言葉に、また、と言うのが付いていた。

またどこかで会えるのだろうか。会えないかもしれないし、会っても気がつかないかもしれない。でも会えたら素敵。


出会いとは不思議なもんだ。

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