病院に着いたのは4月24日夜の0時半。
佳代さんは痛みに耐えていました。
定期的に襲ってくる陣痛に身体を震わせて耐えています。
とにかく寝ようにも陣痛の痛みで眠れないらしく。
苦しいだろうな。
とりあえず僕は次の日の準備もしてきていたので、近くのホテルでもとればいいか位で、探したのですが、どこもチェックイン時間を過ぎていたので、まあ漫画喫茶でも探して寝りゃあいいか。漫画喫茶で、なんか結構うまいソフトクリームでも食べよう。
この機会に「コウノドリ」でも読み切ろうか。コウノトリじゃないのね、コウノドリなのね。アボカド。
と。
看護師さんが来て、旦那さんはここで付き添ってても大丈夫ですよと言ってくれてね。お。じゃあいよう。いられるものはいよう。
コウノドリはまた今度見よう。ソフトクリームはいいや。
とりあえず朝になったら検査と方針をたてますので、それまではこのまま耐えて下さい、むむ!むむむ!
「成さんは明日2回公演だし、とりあえず寝てね」
と佳代さん。
僕は床に直にゴロンとしながらウトウト。佳代さんの耐える声でハッとしたり、なんだかこうして2人きりで過ごすのも不思議だなあ。まどろみの中、色々と考える。思い出す。どこまでが夢か分からない。
何分か毎に看護師さんが覗きに来てくれて、僕もゴルゴの様にハッと起きてライフルを構えるような動きで起きたり。
そうして、佳代さんの背中をさすったり。
佳代さんはキツそう。やっぱり女性ってすごい。
男はダメだ。男ってやつはこういう時に何もできない。ゴルゴでもない。
長かったのか短かったのか。時間が過ぎて、朝。
陣痛室に移動して、検査。
とにかく出産できる身体の状態になるまで耐えるしかないらしい。
うまくいけば昼過ぎ、夕方あたりでしょうねと。ひゃーー!あと何時間このキツさなの?!
佳代さんはブルブル震える。そして、震えながら、落ちる。眠さと痛みが交互に襲ってきてるみたい。あっ!失神した!と思ったらまた痛そう。ギヤー!なんだこれは。地獄だよ。ザ・ジゴク!
痛い、落ちる、ハッとする、そして普通に話しかけてくる、そして痛い。
そんなこんなで僕はリミットの時間になっちゃって劇場に向かわなければ。気が気じゃないが行かなければ行けない。僕は忍者、女子高生だ。ちちは今忍者、女子高生なのだ。子供が大きくなったら言うんだ。
ちちは君が産まれた時に、忍者、女子高生だったのだよと。
やきもきしながら向かいましたが、劇場に着いたら切り替え。
まずは昼公演。14時半から。本番中は携帯などみない。
公演は楽しく、そして集中力。佳代さんも頑張っているのだ。今、場所は別々だがお互い頑張るのだ。
16時半終演。
携帯をみると、まだ連絡が来ていない。
佳代さんのお母様に電話すると、ずっと待ってるけれど、状況が分からないらしく。
夜公演の準備をしていると
「今から分娩室に入るみたい」との連絡。
グッ!!!
うおおお。涙が出そうだぞ。頑張って頑張って頑張って!祈るような気持ちとはこの事だ。ああ、俺は今祈るような気持ちなんだな。初、祈るような気持ち!!
夜公演。特に集中。こういう時こそ集中力だ。
改めて、今、この時に、この作品をやれてる幸せを嚙みしめながら。
一生忘れない数日間を過ごしてくれているみんなと。1つの作品を。
公演終了。
あ。
佳代さんからLINEが来ていた。19時40分位だ。
佳代さんから。よかった。佳代さん無事だ。よかった。本当によかった。
「無事に産まれたよ
3654グラムの可愛い女の子です」
あ。
楽屋でみんなが喜んでくれている。
あれ?
ちちになったのか。
そして写真がピロンと来た。
僕はちちになり、佳代さんは、ははになりました。
という事でみなさま。無事産まれましたーー!!!
今こそ小泉純一郎さんの一言だ。
「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!」