令和2年度の廿日市市予算案が公表されています。予算案については、その概略が2月18日にホームページ上にも公表されています。

 

 

 今回は、ホームページに39ページ載っているその内容を簡単に紹介してみたいと思います。予算は、市長の政策が具体化されたものですから、一定の価値観で作られていて、価値観の違いで評価も違うことはご承知おきの上でご覧くださいね。

廿日市市令和2度予算概要(公表資料)

 

 

 まず、予算総額です。通常の行政サービスを行うための一般会計予算が530億円。8つの特別会計(国民健康保険特別会計(国民健康保険税)、介護保険特別会計(介護保険料)、後期高齢者医療特別会計(後期高齢者医療保険料)、漁港管理特別会計(漁港使用料)、港湾管理特別会計(港湾使用料)、墓地管理事業特別会計(墓地永代使用料)、市営住宅事業特別会計(住宅使用料)、宮島水族館事業特別会計(水族館入場料等))の予算総額が261.6億円、企業会計(下水道事業会計(下水道使用料)、水道事業会計(水道使用料)、国民宿舎事業会計(宿泊料等))の予算総額が131億円で、総合計922.6億円です。

 

 

このうち、予算発表の概要では、一般会計だけの説明ですので、以下一般会計530億円の説明をしていきますが、個年度の資料は、分かりやすくという意図なのか前年度までと比べて簡略化されていますので、推測になる部分も出てきますのでご容赦ください。(情報の公表については、行政の側からすると、あまり詳しくすると分かりにくくなりますから、簡単にして分かりやすくというのはその意図は分かりますが、あまりに簡略化されると分析的には理解できなくなります。データとしては全て解析できるように公表したうえで、概要版で説明する、という姿勢が望ましいと考えます。すべての情報は市民のものであり、ビッグデータの活用のための情報公開は、これからは当たり前に行政に求められます。)

 

 このうち、一般会計の予算総額は25億円減って530億円ですが、その減額の最も大きいのは、積立金であるまちづくり推進基金37億33百万円減です。これは、市の合併によって借金して基金に積み立て、以後合併事業のために使うことができる資金で、前年度積み立てましたが、1年度限りのモノなので2年度はなくなっています。いわばこの部分の減額は、義務的経費・行政サービスや公共事業とは関係ないものですから、義務的経費・行政サービス・公共事業の実質予算は増えているということになります。何が増えているのかを以下見てみましょう。

 

 

公表資料の37ページを参考にしてください。

 

 

令和2年度の予算の特徴は、歳出のうち義務的経費の3経費である人件費、扶助費、公債費が大きく増えていることです。前年度比で、人件費が9億6百万円、扶助費(保育園、障がい者福祉、生活保護など)が6億54百万円、公債費が4億82百万年円、義務的経費合計で20億43百万円増えて、合計247億51百万円になっています。

 

 

 市税と地方交付税を足した額が254億46百万円ですから、義務的経費だけで税収入の97.3%を占め、制約なく自由に使える収入のほとんどを、義務的な経費に使わざるを得ない状況になっていることを示しています。

 

 

 ただ詳しく見ると、人件費の増額は、これまで「物件費」で計上していたアルバイトさんの賃金を、令和2年度から、「同一業務同一賃金」原則により「会計年度任用職員」さんの報酬として「人件費」で計上することになったことによるもので、正規の職員の給料が上がるという意味ではありません。物件費は11億31百万円減少しています。

 

 

 扶助費が増えているのは、昨年10月から始まった幼稚園保育園の無償化による給付が増えたことによります。国の政策によって、地方の支出は大きく変更を余儀なくされますが、支出額の増に対する財源保障は国が行うべきで、支出が増えただけではなく、その分国からの補助金も増えています。

 

 

 公債費が増えているのは、借金の元金返済が増えたことによります。過去に借りた借金の返済が新たに始まるなどによって増えるものです。市の借金は、元金の返済は3年据え置きが通常なので、平成28・29年度に借りた元金の返済が始まって増えたものと考えられます(平成29年度はそれまでの過去5年間の平均の1.7倍の借金をしています)。

 

 

 これらのことから、前年度と比較して義務的経費で実質的に増えたのは、公債費(借金返済)の約5億円ということになります。

 

 

道路や箱物建設の投資的経費は、97億98百万円と前年度より2億65百万円減少していますが、平成29年度以降高原状態で推移しています。平成24年度~28年度の普通建設事業費の平均は59億2千万円でしたが、平成29年度101億8千万円、30年度182億72百万円、31(令和元)年度100億1千万円です。

 

 

その他の経費では、物件費が11億31百万円減少しているのは、前述のアルバイトさんの賃金が人件費の方へ計上されることになったことによるものだと考えられます。補助費等が17億82百万円増えているのは、下水道事業会計等が公営企業会計に移行することにより、それまで「操出金」で計上されていたものが「補助費等」で計上されるようになったからです。「操出金」は17億97百万円減少しています。そして、積立金が前年度の「まちづくり推進基金」積立がなくなったことによる減で30億99百万円減少しています。

 

 

こうしてみてみると、大まかにいえば、令和2年度の一般会計予算は、箱モノ等の公共施設の建設事業は高止まり状態のまま、過去の高額な借金の返済が始まり公債費が増え始め、さらに財政の硬直化(自由になるお金が減っていく状態)傾向が強まる予算だと言えるのではないでしょうか。

 

 

何が行われる計画になっているのかは次回です。