高齢者福祉や児童福祉など、どうしても必要な財源の確保はどうしたらいいか、で前回終わりました。この答えを出す前に、もう二つ経費についても見ておかなければいけません。公債費と物件費です。

 

公債費とは、地方自治体の借金の元本と利息の返済です。地方自治体は、原則として建設事業にしか借金できません。学校建設、保育園建設、道路新設改良、公民館建設、庁舎、ホール、体育館、砂防や河川などの防災工事などです。
  
  
原則といったのは、もう20年近く前から臨時財政対策債といって、建設事業以外でも、国が許可する範囲で借金ができるようになっているからです。今はこの借金残高の方が多くなっているのが実態です。
 
 
この借金は、地方交付税制度という、地方自治体が行政を行うのに必要な財源が足らない場合に、国からお金を交付する制度があるのですが、国も消費税増税しても交付するお金が足らないので、地方が借金して財源とせよ、というお達しで借金しているものです。
  
  
この借金は、将来的には地方交付税という国からのお金でその元金利息を返済できるという触れ込みです。いわば、将来交付される予定の地方交付税の前払いという性格のものですので、将来の地方交付税が減少しているということを理解しなければなりませんが、多くの自治体は「借りなきゃ損」といって目いっぱい借りています。廿日市市もこの借金なくしては予算を組めませんので許可限度いっぱい借りています。
 
 

地方交付税で返済するという約束は未だ履行されず、毎年度同じ臨時財政対策債で返済されています。いわば、借金して借金の返済に充てているという状況にあります。これは国も国債という借金を返済していますが、税金では足らないので国債で返済する実態と同じです。違うのは、今の時点で国は「破産」するということはありませんが、地方はありうるということです。夕張市のように借金の返済ができずに国の管理下に置かれるということになります。夕張市の財政破綻はまたの機会に書きたいと思います。
 
 
とにもかくにも、廿日市市の借金の返済の状況はどうでしょう。家計と同じで、借金が多すぎると、きまって入ってくるお金のうち自由に使えるお金は減っていくので、気になるところです。これも、類似団体と比べてみたいと思います。

 

 

下のグラフは平成29年度決算ですから、大規模な建設事業だったごみ焼却場の建設や大野東市民センターの建設や大規模都市計画道路などの事業の元本返済は始まっていませんが、毎年度自由に使える収入の中に占める割合は19.9%で類似団体50団体中悪い方から5番目です。平均の14.8%と比べると5.1%も多く元利払いに使っているわけです。金額でいうと、13億4千万円多く支払っている勘定です。

 

 

人件費の次に大きな負担は公債費ということになります。これは過去の借金の支払いなのですぐに減ることはありません。住宅ローンと同じで償還が終わるまで辛抱強く支払うか、繰り上げ返済するかしかありません。

 

 

合併で有利な起債(借金)(国からの地方交付税で半分以上が負担してもらえる)で、廿日市市も多くの施設を建設してきましたし、負担の大きなごみ焼却場建設の元利償還はこれからですから、公債費も少なくなることはないでしょう。まだ手を付けていないけれど、地御前の医療拠点、宮島口整備、新機能開発の県道・市道の市負担、筏津拠点整備など公共施設整備が目白押しですからね。人口が減少するなかで、国は公共施設の削減計画を立てて将来の財政負担を抑えるように指導していますが、廿日市市は逆行しているかのようです。

 

 

公共施設をつくることは、何らかの効用を生み出しますから、住民にとって歓迎されますが、公債費や維持管理費で将来に負担を残すことは間違いありません。将来の世代の負担を考えて、今の施設の建設に反対すると地元住民の大反対にあいます。しかし、将来の負担を増やし、今の高齢者や子どもに必要な支出を抑えてまでやらなければならない施設がどれほどあるというのでしょう。

 

 

公共施設の整備は将来の負担を考えた整備計画なのかが重要なのです。それは、前回述べた扶助費の伸びがあるという前提で考えれば、抑制的であるべきというのは自明のことです。
 
 
以前投稿した記事の中でもありましたように、兵庫県の明石市の泉市長は、計画されていた下水道工事を減らして子ども施策に財源を充てています。

いまこそ、将来、未来のために何が最優先なのかを考える必要があるでしょうね。
 
 
以上のようなことを主張して選挙負けたわけですから、何をかいわんやですが...。

 

 

次回は、物件費と操出金です。