宇多田ヒカルの初のベストアルバムが4月10日に発売になり繰り返し聴いています。しばらくの間、このベストから離れることが出来そうにありません。
こうして初期の曲から現在の曲まで一気に聴くと、今更ながら宇多田ヒカルの登場はミラクルであったと思い出します。宇多田ヒカルのデビューした1998年は、小室サウンドの全盛期でした。それが宇多田ヒカルの登場で一気に観ている景色が変わってしまいました。
それまでは小室サウンドというのは最先端であり、かつ当時の若者の心を鷲掴みにする親しみやすいメロディと詞に時代丸ごとどっぷり浸かっていました。小室哲哉がプロデュースしたのは、まだ売れていないアイドルであり、オーディションを勝ち上がった歌手を目指した素人。それが小室サウンドをまとえば、アーティストとして輝くことが出来ました。そのストーリーも含めて、小室サウンドは消費されていました。
それが宇多田ヒカルという本物の天才が現れた時に、これまでの価値観がガラガラと音を立てて崩れていきました。今まで席巻していた小室ファミリーは紛い物だったと多くの人が気づきました。ここまで価値観の大きく変わるのを、まじかで見ることはないので衝撃でした。
宇多田ヒカルは快進撃を続けますが、2010年に「人間活動」として活動休止しました。2016年に活動を再開しますが、歌詞の世界にも日常生活が織り込まれるようになり親しみを増すようになりました。アーティストとしてのブランク期間に、人として成長をして、それを作品に落とし込むようになりました。
復帰作『Fantôme』は繰り返し聴いています。日常的なことを作品に落とし込めば、陳腐なものになってしまう可能性がありますが、アーティストとしての才能があれば、人の心を打つものになります。
ベストアルバムは、全26曲のうち再録が3曲、新たなミックスを施したものが10曲。ベストではあるものの、新作のようでもあります。しばらくこのベストから離れられそうにありません。