1974年5月31日にRCAレコードよりデヴィッド・ボウイの7枚目のスタジオアルバム「ダイヤモンドの犬」がリリースされました。
このアルバムは、ボウイがジョージ・オーウェルの『1984年』をミュージカル化しようと企画していましたが、著者の未亡人に拒否されたため、アイデアを流用して製作されました。
「ダイヤモンドの犬」という奇妙なタイトルですが、1920年代のダダイスムの創始者、トリスタン・ツァラの詩から取られています。ツァラは、新聞記事を無作為につなげて意味をなさない詩を作りました。のちにカットアップと言われる手法です。
それが下記の詩です。
犬たちがダイヤモンドの中の空気を観念のように横切る時そして脳髄の盲腸が示すのは目覚めの時間プログラム(…)
ボウイの「ダイヤモンドの犬」は、「カットアップ」を作詞に取り入れたと言われていますが、このタイトルはカットアップで作ったというよりは、ツァラの詩を引用したものと思われます。
また「ダイヤモンドの犬」発売前の1973年11月17日に、ボウイはビートジェネレーションを代表する作家のウィリアム・バロウズは『ローリング・ストーン』誌の企画で対談しています。対談は1974年2月28日号に掲載されました。
この対談の中で、バロウズが自分のアイデアの70%は夢から得ていると言うと、ボウイはベットの横にテープレコーダーを置いて、睡眠中に何かが思い浮かんだらすぐに声に出して録音すると語っています。この手法は、まさにシュルレアリスムの夢の記述の方法と一緒です。
カートコバーンやトムヨークなど、カットアップを取り入れたミュージシャンはいますが、ボウイは相当早い時期からカットアップの手法を取り入れていました。またボウイはダダイズム、シュルレアリスム、ビートニク、ロックを1本でつないだ存在とも言うことが出来ます。