我が輩は、大河ドラマ(現代物はみない)を欠かさず見ている。

その理由は、

①歴史が好きである。

②50回近く放映される日本最長のドラマであるため

  脚本・役者等がそろわないともたない。

  つまり比較的良質のドラマが期待できる。

③主人公は、大志を抱き、何事かを成し遂げるため向上心をもって挑戦する。

 その姿勢が好きであり、その成長過程が参考になる。

 協力者との出会いはもちろん、

 味方や部下の裏切り・背信、それに対する復讐あるいは寛容な態度等が

 人事的決断を下す上で参考になるからだ。

 メモをとりたくなるセリフも多々あった。


しかし、「篤姫」はすべて見たが、メモをとりたくなるセリフが一つもなかった。

毎回、

「これは大河ドラマではなく、長い幕末ホームドラマだなぁ」

と観じていた。

高視聴率だったらしいが、

 ーNHK大衆迎合路線

をかいま見るおもいが強かった。


熊本空港のラウンジでたまたま読んだ週刊誌に、

篤姫の脚本家の裏話がのっていた。

「篤姫や小松帯刀に関する史料はあまり残されていません。

 でもそれがドラマ作りには好都合だったとも言えます。

 史実にとらわれず(→ここが危険!)

 現代にも通じる人間ドラマを書こうという点で私は迷いませんでした」

つまり、大河ドラマで強調された

 ー篤姫の重要な歴史的役割

は、すべてフィクション=ウソということである。


篤姫は、ただ単に、

 ー嫁ぎ先の徳川宗家の存続だけを訴えただけ

の小人に過ぎない。

だから史料が残されていないわけで、研究書もあまりない。


そんなことは多少なりとも幕末・明治維新史を学習している者にとっては常識なのだが、

 ー受験のための最小限の歴史しか知らない人々

にとっては常識ではないのである。


数ヶ月前、愛知支部での審査を終え、彦根に帰る途中の帰路。

電車内で目をつぶっていると

我が輩の座席の前で立っていた女子大生二人が次のような会話を大声でしていた。

「ねぇねぇ、篤姫みた~」

「見た見た。おもしろかったわ~」

「篤姫って偉大よねぇ~、ところで石田三成はいつでてくるのかなぁ」

「うっそ~、石田三成は江戸時代の討ち入りの人じゃないの」


我が輩は目をつぶりながら、麗しの新日本人として危機感をもった。

(大学生の歴史の知識はでたらめだなぁ。危ないよなぁ、日本は) 


トレンディドラマ等の主人公は、もともと架空の人物なので何をやっても許される。

しかし、実在していた人物をとりあげる場合、

 歴史上の業績

に関してはドラマといえどもねつ造してはならない。

 

現政権が、革命勢力に闘わずして自己の政権のシンボル的城を明け渡した

 ー江戸城無血開城

は世界的にもめずらしい偉業だ。

それを

 ー嫁ぎ先の徳川宗家の助命存続嘆願書

をだしただけの人物の業績にしてしまうのは荒唐無稽としかいえない。


「歴史に無知!」

なのは、最近の日本人の風潮であり、

驚くべきことに上記の女子大生レベルは、

国会議員や官僚等、

「おれ様は、エリートだぜい!」

と薄い胸をはりそうな職業人にも確認できるからだ。


以下続く