25年ほど前、
我が輩の知人が
ー難しいことを漫画で解説する(今では当たり前だがこの頃は少なかった)
という企画にのり、
彼が原作、
横山光輝氏(三国志や徳川家康等の漫画化)の某アシスタントが
漫画を担当し、
共著で
『漫画 民法』
を書こうとした。
この知人の妻によると
「何年も有名な漫画家の先生のアシスタントをしていると
描くものすべてが、
その先生の漫画になってしまい
一生アシスタントしかできなくなってしまうんですって」
ということだった。
「な~るほどザ・ワールド!」
つまりアシスタント(弟子)を長年していると
独立してヒット作を書こうと思っても
描く漫画がすべて
弟子入りした先生の漫画にウリトゥル(二つ)になってしまい
著作権法上、問題になるのかも知れない。
おそらくこういう事情は、
さざえさん、どらえもん、ゴルゴ13、ポケモン、ゴーマニズム宣言、
クレヨンしんちゃん、あんぱんまん、スタジオジブリのアニメ作品等
大ヒット作を支えているアシスタントにもいえるのかも知れない。
そしておそらくその状況は、
作者の死後も続くのかも知れない。
もちろん
「私は大先生の作品を支えている縁の下の力持ちで満足だ!」
という人もいるだろうから
他人がとやかくいうことはあるまい。
けれども通常、
学者の学術業績著作が1本(これすらない大学教授が多数)、
作家の代表作が1作
歌手のヒット曲が1曲
であるように、
漫画家のヒット作も1作
と思われるので、
多少なりとも向上心のある漫画家なら
「私だけの漫画を世に出したい!」
と思うのが人情ではあるまいか。
しかし、出版界、とりわけ漫画出版業界というのは、
大手数社(小学館、講談社等。通常、ISBNの番号が一桁)しかないのだから
仮に売れ筋の漫画家のアシスタントが、
その漫画家=師匠の意に反して独立してしまった場合、
たとえそのアシスタントの作品が優れていたとしても
大手出版社は敬遠するのが普通ではあるまいか。
なにせギルド社会なのだろうから。
だから売れ筋の漫画家が、
長年支えてくれたアシスタント=弟子が
自分の漫画しかかけなくなる前に
独立させてあげるか、
もしくは独立を許し(反対しないも含む)、
大手出版社に
「こいつの漫画おもしろいから一度チャンスを与えてあげてくれ」
と紹介してくれればデビューが可能になるのかも知れない。
赤塚不二夫の「弟子(弟分のような関係もいたらしい)」には、独立して
代表作を1作残している漫画家が結構いる。
古谷三敏「ダメおやじ」(悪ガキの頃、「鬼婆=妻のイビリがひどいなぁ」と思いながらみていた)
北見けんいち「釣りバカ日誌」
とりいかずよし「トイレット博士」(悪ガキの頃、「きたないなぁ」と思いながら見ていた)
(→とりいの弟子が、作風が全然違う、柳沢きみお「翔んだカップル」)
土田よしこ「つる姫じゃぁ!」(悪ガキの頃、姉が買ってきた少女漫画に載っていたような気がする)
等であり、
よ~く見ると
赤塚不二夫の漫画に
「似ている」
と観じる。
ことの経緯は内部の人にしかわからないが、
ギャグマンガの神様=赤塚不二夫
を敵に回してギャク・お笑い漫画界でデビューすることは
無理だと思われるので
赤塚が「弟子」達の独立を許した
と思うのが自然だろう。
だとすれば、
「赤塚不二夫のえらさは「弟子」の独立を許し、
ギャク・お笑い漫画界を活性化させたことだ!」
と
天才バカボンのオヤジとともに
彼の母校・バカ田大学の創立者の銅像前で叫ぶことができる。
「これでいいのだ!」