我が輩は生まれも育ちも日本。

朝鮮学校で12~3年間も習った朝鮮語は、

 北朝鮮的朝鮮語(おそらく北朝鮮の首都・平壌地方の方言)

であり、

朝鮮学校の教師も、

 日本生まれ、日本育ち

であり、

親の世代にあたる朝鮮生まれの在日一世から聞かされていた朝鮮語も、

 親の出身地・慶尚道(韓国南西部)の方言

であるがゆえ、

「日本的北朝鮮的慶尚道的朝鮮語を身につけているよなぁ」

というのが偽わらざる実感である。

まぁ自嘲的に言えば

「ビビンバ朝鮮語だなぁ」


ゆえに韓国語(というよりは、韓国の首都・ソウルの方言)の発音は得意とはいえない。

ヒアリングは、100%とは言わないまでも、

「ほぼ大丈夫」

だが、

それすらも落ちないように、

韓国のドラマや映画を録画し、韓国語で聞くようにしている。

その一つが、BS朝日で放映中の「サンド」である。


朝鮮朝時代(中国は清時代)の

 美しい商人の道

を描いたものだ。

最近、日本のTVで紹介されている韓国ドラマは、

 封建制下の身分が低い人々の人生

を描いたものが多い。

「宮廷女官 チャングム」、「タモ」、「ファン・ジニ(一字違うとヤバイ)」等々。


「サンド」の主人公のイム・サンオク(イ・ジェリョン→名前は忘れたが日本の俳優に顔がそっくり)が

めざす商人も、封建制度の身分社会の中では低い身分だった。


どうしてこのような番組が製作されたのかを推測すると

韓国も日本同様、

 貧富の格差

が激化しており、

「金だけがすべての悪徳成金が

 さもえらそうにしている風潮に

 警鐘を鳴らそうとしているのではないか?」

と観じている。

第13~15話は、とくにその意図を観じることができた。


主人公イムは、

当時、高価だった朝鮮人参を

清国の燕京(現北京)で売りさばく密貿易の従者を命じられる。


ところが朝鮮人参はまったく売れず門前払い。

原因は「白参(白い朝鮮人参)は内臓に悪い」という噂。

しかし、イム達が持ち込んでいたのは、紅参(赤い朝鮮人参)。

女性のリーダーが、

「紅参は白参より効果が優れているので、説明すれば売れるはず」

と燕京NO1の薬剤商のもとへ行く。

しかし、会ってもくれないので一同落胆。


そこでイムが一計を案じ、

店主への手紙をしたため店員に託した。

そこには詩人・呉偉業の詩が漢文で書かれていた。


すると店主が

「会う」

という。

店主は漢民族で、

女真族=満州族の現王朝・清を忌み嫌っており

漢民族の前王朝・明の時代を尊ぶ硬派感傷主義だったのだ。


大略の会話。

「君はどうして私の心情がわかったのか?」

「店には、明朝時代の書籍等がありましたので云々」

店主はイムを大いに気に入り、

「今までたくさんの商人と会ったが、私の心情を理解したのは君が初めてだ。

 君のような人間は信用できる。よろしい紅参はすべて私が買い取ろう!」

となり、

天銀200両(店が2店舗だせる大金らしい)をイムに与えて言った。

「この金を自由に使いなさい。

 君は大成するに違いない。だから遠慮無く使ってほしい!」

(惚れ込んだ若者を援助することは、成功している華僑商人の哲学で、良き美風だ)


イムの上司は大喜び。

「朝鮮で一緒に商売をやろう! さぁ前祝いだ!」

というので売春宿へ嫌がるイムを強引に連れ込む。


イムは店主から若い女をあてがわれたのだが拒絶。

すると若い女は、急に泣き出し。

「助けて下さい!」

と哀願。

父に売られ、イムが初めての客だという。


正義はかならず視聴者の期待を裏切らない。

イムは悩んだ末、

「金は、人を生かすためにある!」

と決心し、天銀200両で身請けする。

しかし、助けた若い女の指一本もふれず、
「君は故郷に帰りなさい」

とハンフリーボガードのように言う。


上司(イ・ヒド。チャングムでの悪役商人)は大激怒。

他方、女性のリーダーは感動。

彼女は、金のためには手段を選ばない自分の父と比べながら、

「金のために人を殺す商売人もいるのに(父のこと)、

 金で人を生かす商人もいるというのは、本当に救われる思いです」

朝鮮の実家に帰宅したイム。

母親のクッパ等を売る飲食店・旅館が繁盛。

母親は言った。

「人間の欲はきりがない。

 金は魔物よ。

 金ばかり追いかけると

 一瞬にして身も心も囚われものになる」


イムは無言で

「我が意を得たり」

という表情をするのだった。