次男の貴明が、

育児では、

 ー宿敵病気三兄弟(水疱瘡、おたふく風邪、はしか)

の一つ、

水疱瘡の侵略を受けてしまった。


顔、身体、

そして子孫を残すため大切なチンチンまでもが、

この「エイリアン」に浸食されてしまった。


我が輩子孫防衛軍は、

予備役をも召集し、

「帰ってきたウルトラマン」の「MAT」ほどではないにしろ、

緊急事態にそなえ万全の準備をととのえた!


といえば、

絵になるが、

実際は、病院へ連れて行き、

薬を買って、

医者のアドバイスを参考にしながら

そえ寝することしかできない。


我が輩は、

チビをダッコし、

自宅近隣の田中クリニックへ連れて行った。

「疱瘡は、ヘルペスの一種で、・・・・・・」

と説明を受けながら、

ふと、

(我が輩がガキの頃とは違い、

 医者が親切丁寧だよなぁ~)

と昔を思い出して感心してしまった。


なにせ、

30数年前の医者は、

「白い巨塔」の財前ほどではないにしろ、

皆、意味もなく、

えばっていたからだ。

質問でもしようものなら、

顔を真っ赤にして怒り出し、

 ー無礼な!

  お前はバカなんだから、オレ様の言うことを聞け!

というような感じだったが、

今の開業医は、

親切丁寧な人が多い。


診察料は、

1コインの500円!


パチンコ店の「換え場」同様、

新設医院の近隣にかならずできる薬局へ行き、

ドバドバ処方してくれた処方箋をだすと、

薬代は、なっなんと! 

40円!!!!!!!!!!!!!!!!!!


(日本は、なんだ、かんだ言っても、修正社会主義だよなぁ~)

と感心すると同時に、

(まぁ、これも道路と同じで、

 すべて税金が導入されている帰結なんだろうけど)

と裏表で検証するのが、

硬派感傷主義だ。


いずれにせよ、

我が輩子孫防衛軍の立場は、

貴明がはやく回復することにつきるのだ。


TV・DVDの前に

ふとんをしき、

「帰ってきたウルトラマン」や、

「ウルトラセンブン」を親子で鑑賞した。

けれども、

昔のウルトラマン・シリーズは、

ストーリー性が高いので、2歳児にはおもしろくないようだ。

すぐ飽きてしまう。


やがて、かおるゴンが登場。

リバルティの四季のごとく

歓喜歓喜のメンパッチン!


しかし、かおるゴンが立ち去ると、

ベートベンの運命のごとく

衝撃を受ける我が子の姿がそこにはあった。


(まぁ、父親より母親の方が、いいにきまってるわなぁ~)

と、ため息混じりの硬派感傷主義。


貴明は、

食欲があまりないのに、

「ジャガリコが食べたぁ~い!」

と言った。


「ジャガリコとは、果たして何ぞや?」

帰宅した明宗に聞くと、

「カルビーのお菓子だよ」

とのこと。


「よしっ! ラジャー!!」

と右手を右額の上にかかげて敬礼する硬派感傷主義。


午後7時に彦根支部での指導を終え、

スーパーに立ち寄ってジャガリコを買おうとしたが、

手にとって原材料名をみると、

 ー乳化剤、調味料、カゼインNa、香料、カロチノイド色素、酸化防止剤

など数年前のベストセラー『買ってはいけない!』が、

 ー身体に害!

と警鐘を鳴らしそうな物質のオンパレード。


(むむむっ! これは買うべきか、買わざるべきか)

と自問したが、

午前中にアドバイスを受けた医者との会話を思い出した。


<8時間前にワープ!>

「息子は、食欲がないのですが。

 栄養がなく身体にも悪いお菓子でも、食べないよりはマシでしょうか?」

「そうですね」

・・・・・


(是非に及ばず)

といわけで10個もまとめ買いしてしまった。


自宅に着くと、

貴明がめずらしく我が輩を玄関まで出迎えてくれた。

ゴール前のアン・ジョンファンのダッシュのように。


「アッパー! ジャガリコは?」

「はい! これだろ!!」

「わぁ~い!」

(キャWAいい!!)

餃子目の親パガがそこにはいた。


ところがだ。

かおるゴンは、コ-ジコーナーのジャンボシューほど甘くはない。

「貴明! ダメヨ! そんな身体に悪いものは! 野菜を食べなさい!!」


貴明の顔は、

まさしく、

1945年8月15日の玉音放送を聞いていた日本人の無念の顔だった。

数秒後、泣き崩れるのがわかった。


大きな瞳から大粒の涙がこぼれると同時に

キャWAいい口から

「じゃ~、」

「が~、」

「り~、」

「こ~!」

と断末魔の叫びが放たれた。


(泣いている顔も、キャWAいいなぁ)

と思うつつも、

油断のならないかおるゴンもいるので、

「貴明、野菜を食べたら、アッパがオンマに頼んであげるから。

 さっ、食べなさい」

と人参を箸でとった。


そして、

「じゃ~」

「が~」

「り~」

「こ~」

とあいかわらず泣きながら叫んでいる貴明の口を観察し、


(語尾の母音が、あ~で終わる、

 「じゃ~」、と「が~」が、ねらい目だな)

と分析。


「じゃ~」

と貴明が叫ぶやいなや、

箸でとった人参を

カウンターの蹴りのように、

息子のベロの上に、

ぶち込むのだった。