JTA本部事務所。

昇級昇段審査の結果を精査する。


午後は、横浜みなとみらいへ。

アメリカの州立大学に留学中の姪のミヘが、久々に帰国したので、会うことにした。


3年ぶりの再会。

22年も前、生まれて2日目に対面した<しわくちゃサル>は、立派な女性になっている。

(顔と声が姉と、ウリトゥル(うり二つ)!)

なんでも海洋生物学者を目指しているという。


「ミヘ!

 7人いる姪や甥の中で、お前が一番しっかりしている。

 サンチョン(おじさんの韓国語)は、

 ただ、

  ー血がつながっているから

 というだけでは、情はわかないタイプの人間だが、

 お前のように、目標を持っている姪が一人でもいることは、とても嬉しく思う。

 応援するから、がんばれ!」


食事後、

 ー大学のルームメイトが日本に遊びに来る!

というので、

 ー横浜観光のポイント

をレクチャーしてあげるのが、硬派感傷主義。

我が輩は、横浜観光に関しては、

 ープロ

を自認している。


一通り終えて、横浜駅へ。

銀行周りとイサミの横浜支店へ行くためだ。


日本テコンドー協会の有段者道衣ニューモデルが到着。

(なかなか見栄えが良い)

これで従来からの構想が実現。

ライトコンタクト・テコンドーの有級者の道衣の左胸には、「JTAマーク」を、

フルコンタクト・テコンドーの有段者の道衣の左胸には、

 「蹴美」&「蹴武」のロゴが入った「JTA新マーク」をつけることになった。

(この件については、後日、JTA本部HPで説明)


下北沢支部での指導を終えた夜、

本部事務所に戻り、メールを確認する。

(妻かおるゴンからか? また抗議糾弾メールか~、はぁ~)

と溜め息混じりで、左手でマウスをクリック。


「どえ~ぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ー明宗がドアに足をはさんでしまい、足の親指のツメが全部はがれてしまいました。

 夏休みの旅行は、延期して下さい。


「あきむね~!」

と叫びながら、

慌てて電話を手にする親ぱガ硬派感傷主義。


「はい」

「あっ明宗の具合はどうなんだ!」

「今はふとんの上で横になってるわ」

「痛がっていないのか?」

「だいぶ落ち着いたみたい」


「いったいどこで足をはさんだんだ!」

「玄関のドアよ。ゾウリをはいていたらしいの」

「可哀想に。

 でもどうやって病院へ行ったの?

 家には明宗しかいないはずだし。

 隣の人が救急車をよんでくれたのか?

「お母さんが、応急処置をしてくれたのよ」

「えっ?! あっ、なるほど、お母さんが助けてくれたのか!」


妻の母は、現役時代、

北海道の北広島町

(明治の時代、広島県出身者が、北海道に開拓団として集団移住して出来た町。広島カープファンが多い)に在住しながら旭川などの裁判所で調査官をしていた。

北海道大学教授だった妻の父の<栄転>などで、やむなく職を辞し、東京に移住。

年金生活が始まった今も、東京地裁家庭裁判所で調停委員(嘱託)をされている。

1ヶ月に1度の割合で、育児のサポートに来てくれているのだ。


我が輩は、お母さんと妻との関係(オモニと姉との関係もしかり)を見ていると、

やはり女の親子は、歳を重ねるに連れ、

 ー親子関係

というよりは、

 ー友達のようになる

というのが、

男としてのいつわざる実感なのだ。

父と息子との関係とは、明らかに違う。


とりわけ、娘の育児を通じて、

母と娘との関係は、

二人で一人の「バロム1」のように、

 ー合体! 一体化!!

していくのが、よくわかる。

男が入り込めない

 ーおんなワールド

を創り上げて行くのだ。


だから、平均寿命が男よりも長い女にとって、

(娘がいるか、いないかは、メンタル的に、大きいよなぁ~)

と観じていた。 


と同時に我が輩は、

常日頃、お母さんに感謝しているのだが、

この時ばかりは、感謝の念を超えた。


我が輩が、うぶガキの頃、

大阪万国博覧会のテーマソングを歌った南春男のように、

 ーお母様は、神様です!

う本部事務所で叫ぶのだった。


「お母さんにかわってくれ!」

「お母さん~!」


「はい」

「お母さん! ありがとうございました! お母様は神様です!!」

「はぁ?」

「・・・・・」

いつものパターンだが、

育ちの悪い我が輩のユーモアは、なかなか理解してもらえない。


我が輩は、

「クレヨンしんちゃん」の父親ひろしが、

きれいな女性に接する際、

いきなり劇画的かつ紳士的になるように、

クールな会話に変えた。


「お母さん。明宗は、どうような状況だったんのでしょうか?」

「玄関で足をはさんだのは・・・・・・。」

流石は、裁判所調査官だけのことはある。

お母さんは、

 ー明宗ドアはさまり事件

の概要を裁判官に報告するかのように、教えて下さった。


「ありがとうございました! お母さん!

 明宗は、お母さんの適切な処置のおかげで救われました。

 明宗にかわっていただけますか?」

「はい。明宗。お父さんよ」


「はぃ」

「明宗、だいじょうぶか?」

「うん」

「痛くないか?」

「ちょっと痛いけど」

「そうか。当分は、家で休んでいなさい。

 アッパがプラモデルをたくさん買って行くから」

「うん」

「それと明宗。

 アッパがいつも

  ー油断しちゃいけない!

 と言ってたけど、よ~く、わかるよな」

「・・・・・」

と、精神的かつ肉体的ダメージを受けている幼い我が子に、

 ー愛の鞭

をうつのが硬派感傷主義。


「貴明は、おきてるの?」

「うん。ヨッチ! アッパだよ~」


「あっぱ?!」

「よしあきか!」

「うん」

「アッパと新幹線見に行く!」

「うん! あっぱと、しんかんせんみにゆく!」

「お兄ちゃんが、足、いたい、いたいなんだって。

 だからヨッチが、いいこ、いいこしてあげてね!」

「うん!」


電話を切ると、

(電話って、本当に、便利だよなぁ~。空間を超えている! 人類最大の発明だなぁ!!)

と、感嘆しつつも、

(明宗、痛くないのかなぁ。眠れないのでは・・・・)

と、息子のことが心配で心配で、

なかなか眠れない親ぱガ硬派感傷主義である。