サミュエル・スマイルズ『自助論』 第2章 忍耐 ー 雨露に打たれてこそ若芽は強く伸びる!


第2章は、天才の特長から始まる。

多くの論者は言ったという。

「天才とは常識の権化である」

「奮励努力しようとする意欲のことを天才と呼んでいる」

「天才とは人間の内なる情熱の炎を燃え立たせる力である」

「天才とは忍耐なり」


スマイルズは言う。

「厳密な意味での天才、すなわち生まれつき聡明で輝かしい素質を備えた人物は少ない。

 むしろ、並の能力にもかかわらず、ねばり強く努力と研究を重ねた末に名声を得た者のほうが多い。

 いくら才気あふれた人間でも、移り気で忍耐力に欠けていれば、

 才能に恵まれなくともひたすら努力する人間に負けてしまう」のだ。

(我が輩考→これは格闘技、とりわけフルコンタクトテコンドーにも言えることだ)


スマイルズは、忍耐が重要だと言う。

「人間の進歩の速度は実にゆっくりしている。

 偉大な成果は、決して一瞬のうちに得られるものではない。

 そのため、一歩ずつでも着実に人生を歩んでいくことができれば、それを本望と思わなければならない」

のだ。

たとえば、ある司祭は、田舎の教区への左遷同様の転勤の命じられた際、

「不平の一つ漏らさず、むしろ進んでそこでの仕事に全力をつくそうと決意」し、

次のように言った。

「どんな仕事でも、それを好きになるよう心がけて自分自身を慣らしていこう。

 そのほうが、現在の境遇に不満をぶつけたり、

 自分にはもっと力があるなどと不遜な考えを持つより、

 よほど人間らしいではないか」と。


つまり、「どんな逆境にあっても希望を失ってはならない」のだ。

「いったん希望を失えば、何ものをもってしてもそれに代えることはできない」からだ。

「しかも、希望を捨てた人間は人間性まで堕落してしまう」

とスマイルズは戒める。


著名な文学者ウォルター・スコットは、

長年勤務していた法律事務所での雑役経験が、創作活動に大変プラスだったと言った。

彼は「自分が実務家であることを常に誇りにしていた。

    ー天才は日常のありふれた仕事を嫌い、軽蔑するものだ」

と語る詩人連中に対し、

「きっぱりと反論した(略)日々のありふれた仕事をきちんと果たしていくことで、

 人間はより高い能力を身につけるものなのだ」と。


スマイルズは、「成長は「無知の知」から始まる」と言った。

ある大学生が、「大学で学ぶべきことはすべて学びつくした」と思いこみ、

担当教授に別れを告げにいった。

教授は「私はまだ知識の宝庫にいたる糸口を見つけたにすぎない」と学生を諫めたという。


(我が輩考→要するに、いかなる境遇におかれようとも忍耐が必要であり、

        不遇におかれようとも不平不満を言うことで人間性を堕落させるのではなく、

        前向きな姿勢で、学ぶ姿勢を保ちながら、

        日々の仕事を黙々とこなすことが、成功への近道ということであろう)