東京新聞より転載


豊洲新市場 商業施設、事業縮小か


東京都が来年十一月、築地市場(中央区)を江東区に移転して開場する豊洲新市場計画で、卸売市場と同時開設する食のアミューズメントパーク「千客万来施設」の一部計画が白紙になる見通しになった。搬入用車両の通行条件をめぐり市場業者側と調整がつかず、施設を建設・運営する事業予定者二社のうち大和ハウス工業(大阪市)が辞退の意向を示したため。都幹部らへの取材で分かった。

 この施設は「民設民営」で、都が二〇一三年八月に事業提案を公募。大和ハウス工業と、すしチェーン「すしざんまい」を展開する喜代村(中央区)の二社で構成する「まぐろグループ」(代表企業・喜代村)が昨年二月、事業予定者に決まった。

 構想では、喜代村が水産仲卸の街区(一・一ヘクタール)に、市場関連業者らの専門店や市場の食材を使ったフードコート、首都圏最大級とされる温浴施設を開設する。大和ハウス工業は青果の街区(〇・六ヘクタール)に、世界の調理器具の販売、家庭設備器具の販売修理などの施設を計画。本年度内に着工する予定だった。

 しかし、施設への車の通行ルートをめぐって、青果の市場業者から「搬入車の出入りの妨げになる」などと反対があり、通行車両を減らす妥協案にも理解が得られなかったという。

 昨年末までに大和ハウス工業から都側に辞退意向が示され、都は同社が事業予定だった敷地の開発を凍結。「築地のにぎわいを継承・発展させる」として、年四百二十万人の来場を見込んだ構想は、工期や施設内容を含め見直しが避けられなくなった。

 大和ハウス工業は辞退意向について「協議中のため答えられない」(広報企画室)と説明している。

 水産仲卸業者でつくる東京魚市場卸協同組合の伊藤淳一理事長は「我々の商売は、(包丁や包装資材などの)関連業者が欠かせない。(千客万来施設は)新市場と同時オープンが前提だ」と話している。

 東京都の舛添要一知事は二十日の定例記者会見で「事業スケジュールが若干遅れているとの報告を受けた。できるだけ早く開設したいので、そういう方向で努力する」と語った。

 豊洲新市場の「千客万来施設」 敷地面積は豊洲新市場の計1・7ヘクタール。喜代村、大和ハウス工業の提案によると、都有地を30年間の定期借地権方式で、年約1億3600万円の貸付料で使用。水産仲卸街区に7階建ての温浴棟など3棟、青果街区に6階建ての1棟を整備する。