以下、Bloomberg社サイトより転載



8月19日(ブルームバーグ):

ラスベガス歓楽街最大のカジノ運営企業、米MGMリゾーツ・インターナショナル は、移転を予定している東京都築地の中央卸売市場の跡地をカジノ建設候補地の1つとして検討している。都内のカジノ建設ではこれまでお台場が候補地だったが、新たな場所が浮上した。

MGMのジェームス・ミューレン最高経営責任者(CEO)はカジノを含めた統合型リゾート(IR)建設の可能性を探るため3月に築地市場を訪れ、調査したという。同社の事業計画に詳しい2人の関係者が明らかにした。

カジノは国内で現在違法だが、自民党議員らが合法化法案を昨年末に国会に提出し、6月に審議入りした。地方自治体では、大阪府・市の他、長崎県や北海道、沖縄県などが誘致への関心を示すなか、都内では歴代知事がお台場を候補地としてきた。築地はお台場よりも都心からのアクセスがよく、外国人観光客が訪れる銀座も近いことから魅力的な立地だとの声が上がっている。

香港の投資銀行CLSAのシニア調査アナリスト、ジェイ・デフィバウ氏によると、お台場に比べて築地は地価こそ高くなるものの、アクセスのしやすさという点でより多くの来訪者が期待できるという。「東京では他に比肩する場所はない」と話す。「カジノ運営業者はコストがかかったとしても非常に魅力的に感じるだろう」と述べた。

●銀座から近い立地
国土交通省によると、築地市場周辺の地価は1平方メートルあたり約139万円に対し、お台場周辺では約95万6000円と割安。築地はブランドショップが並ぶ銀座から徒歩圏内で、外国人観光客が利用するホテルのある日比谷周辺も近い。

都の都市整備局、佐藤匡まちづくり推進担当部長によると、築地市場の跡地利用について、カジノを含むIR建設を「対象とするかどうかも現時点で未定」と言う。ただ「新市場への移転コストなどから、一部を民間に売却するのは有力な案の1つ」だと述べた。

東京都ではこれまでに石原慎太郎元知事や猪瀬直樹前知事が、都議会での答弁や所信表明演説を通じ、お台場へのカジノ誘致に関心を示してきた。一方、今年就任した舛添要一知事は6月の会見でカジノ導入について、法的な問題点などを指摘した上で「私にとってこれは優先課題ではありません」と話している。

MGMのグローバルゲーミング開発のシニアバイスプレジデント、エド・バワース氏によると、同社はIR建設には30エーカー(約12万平方メートル)の土地が必要だと考えている。詳細についての言及は控えたものの、お台場と築地が候補地として「浮上している」と述べた。

●単独の地権者
バワース氏は「最終的には、都がどこに建てたいかに尽きる」と言う。お台場の開発候補地の地権者は複数に分かれているのに対し、築地市場は都が保有しており、単独の地権者だと建設はスムーズに出来るだろうと述べた。築地市場の敷地面積は23万833平方メートルで、東京ドームおよそ5つ分。

IRやゲーミング調査会社、スペクトラム・アジアの岡本健司取締役は、「築地の魅力は銀座に隣接していること。基本的には銀座の一部」と言う。一方、「お台場というのは都心からやや離れてはいるが、ショッピングやゲーム、エンターテインメント関連の楽しめる施設が充実している。どちらの場所にもそれぞれ魅力的な要素がある」と述べた。

築地市場は1935年に日本橋にあった魚市場などが移転して開場。日本最大の市場として利用されてきたが、施設の老朽化や効率化などを理由に都は2001年に豊洲地区に移転することを決定した。現在、15年度中の建物の完成を目指し工事が行われている。

CLSAは2月のリポートで、カジノが年間400億ドル(約4兆円)の市場を日本に創出するとの見通しを出しており、国内外の企業が解禁を見越して相次いで参入を表明している。


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