中央区でも入札不調が散見されている公共工事。他自治体も同じ状況みたいですね。

日本経済新聞より転載


名古屋市が発注する公共工事で、入札が成立しない事例が急増している。昨年9~11月は月50~60件前後で、春から夏にかけての5カ月間の約8倍。景気回復などを背景とした労働力不足やコスト増が主な理由とみられる。中には中学校の耐震補強が遅れることもあり、市は発注時期や規模の見直しなど対応に追われている。

 市によると、応札がなかったなどの理由で「入札不調」となった工事は昨年4~8月に21件だったのに対し、9~11月は165件と急増した。12月分は集計中だが、似たような傾向が続いているという。

 主に敬遠されているのは、利益が出にくい小規模な工事だ。土木なら道路の舗装や整備、建築で地下鉄駅の部分改修など予定価格が数百万~1000万円前後の工事が多い。

 南区の中学校の耐震改修工事では、11月の入札への応札がゼロだった。耐震補強に伴う設備工事も含めた発注内容だったため、手間がかかることを理由に業者側が敬遠したとみられる。

 その後、設備工事を除いた内容に見直して随意契約で探したところ、引き受けてくれる業者が見つかった。工期は半月ほどずれ込むことになったが、市教育委員会の担当者は「子どもの安全にかかわる話なので、年度内に工事が終わりそうで良かった」と胸をなで下ろす。

 公共工事の入札不調は全国的に増えており、愛知県内でも学校や病院の建設工事の入札が不調になった。景気対策で自治体などの発注量が増えただけでなく、業界側の事情もある。今春の消費増税前の駆け込み需要をにらんだ民間工事の増加などで人手不足に拍車がかかり、資材や人件費といったコストの上昇も影響しているとみられる。

 名古屋市内の中堅建設業者は「昨年夏ごろから民間のマンションなどの発注が増え、現場に置く技術者や職人がそちらにとられている。役所の工事は人件費などの単価設定が世間の感覚とずれているものが多く、採算も合わない」とも話す。

 名古屋市によると、近年では2007年ごろにも民間需要の拡大や北京五輪を控えた中国発の資材高を受けて似た状況が起きたが、「入札不調の発生割合は最近の方が高い月もある」(契約監理課)という。

 市も対策に乗り出している。規模の大きい業者が小規模な工事に参加できるよう入札の参加資格を緩和。また発注を比較的閑散な時期にずらしたり、小規模な複数の工事をまとめて発注したりして、業者が参加しやすいようにした。国も30日、公共工事の見積もりに使う「労務単価」の引き上げを決めた。

 ただ今後も東京五輪・パラリンピック関連の建設ラッシュや名古屋駅前の再開発が予想される中、「数年は似たような状況が続く」(建設業者)との見方もある。市の担当者は「市民生活になるべく影響が出ないようにしていきたい」としている。